信託銀にも再編観測、「完済」微妙な中央三井、「優等生」住友信託にも不安
アイフルの経営不振であおぞら銀の出方も懸念
中小企業向けの商工ローン合弁事業を展開するなど極めて密接な関係にあり、メインバンクでもある消費者金融大手、アイフルの経営不振も影を落とす。
住信はアイフル単体向けだけでおよそ1000億円、グループ向けを合わせると2000億円弱に上る与信を抱えているとされているからだ。09年3月期のアイフルの決算は、純利益が前期比85%減の42億円と大幅減益ながら黒字は確保した。とはいえ、利息制限法の上限を超える、いわゆる過払い金の返還請求は衰える気配もなく、多額の引当金繰り入れが続く。
改正貸金業法の全面施行を控えて貸出金利の引き下げを余儀なくされ、10年6月までには1人当たりの融資額上限を年収の3分の1に抑える「総量規制」も始まる。住信にとっては、信託銀行本体の与信リスク縮小につながる可能性があるとはいえ、その分アイフルの本業は衰退懸念がぬぐえない。
住信首脳陣にとって気掛かりなのは、アイフル単体向けで500億円前後の融資があるとされる準メイン、あおぞら銀行の出方だろう。今のところ与信引き揚げなどの兆候はないものの、あおぞら銀には新生銀行との経営統合交渉が進行中。仮に実現すれば、新生は傘下にアプラス、シンキ、新生フィナンシャル(旧GEコンシューマーファイナンス)と、3社も消費者金融会社を抱えているだけに、あおぞら銀としてもアイフル向け与信の見直しを迫られる公算大だ。
住信の最高実力者である高橋温会長とアイフルの福田吉孝社長は10年以上にわたる昵懇(じっこん)の間柄。そのアイフルを「見捨てることなど考えられない」と事情通は語るが、あおぞら離脱が現実化した場合、金融危機で傷んだ体で、はたしてその与信を肩代わりすることができるのか。
信託専業大手は「専業」との肩書きとは裏腹に、業務粗利益の5割以上を企業向け融資主体の銀行業務で稼いできた。が、バンキングに傾斜すればするほどメガバンクとの融資競争に巻き込まれ、リスクの高い融資へ手を染める危険性は増大する。メガバンクグループの傘下に入ることを潔しとせず、「孤高」を保持してきた住信と中央三井にも、金融危機を端緒に「再編の足音が刻々と近づいてきた」と見なす金融関係者は少なくない。
(週刊東洋経済)
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