信託銀にも再編観測、「完済」微妙な中央三井、「優等生」住友信託にも不安
当局筋がとりわけ注目するのは、「業界の優等生」とされてきた住友信託銀行の資産内容だ。
不良債権比率こそ0・9%と依然低水準にあるとはいえ、今後の景気動向次第で不良債権へと転落しかねない“予備軍”の「その他要注意先債権」は、昨年3月末から940億円増大して8453億円に膨張。うちどの程度が要管理債権以下にこぼれ落ちるか予断を許さない。
本体とともに市場関係者らが注視するのが、不動産担保融資を展開する全額出資のノンバンク、ファーストクレジットの資産内容だ。
同社は旧日本長期信用銀行系。長銀が新生銀行として生まれ変わった際に会社更生法を申し立てられて破綻し、米投資ファンドのローンスター傘下を経て、05年11月に住信が買収した。住信本体から融資資金の供与を受けて業容を拡大、貸付資産は08年3月末で1944億円(前年同期比27%増)に達し、同3月期には118億円の最終利益を計上していた。
日本格付研究所が同社の長期優先債務にシングルAプラスの格付けを付与したのは07年4月のこと。昨年8月には、(1)親銀行による資本・人事・調達面などの全面的サポート、(2)良好な収益力と財務内容、などを挙げ、格付け据え置きを発表していた。それが同9月のリーマンショックを境に環境が一変。地価下落が加速して担保評価の見直しなどを強いられ、09年3月期は324億円の最終赤字に転落。前年同期に485億円あった純資産は大幅に減少し、23・5%だった自己資本比率は1ケタ台に落ち込んだ模様だ。
住信では「09年3月期に前倒しで損失処理を行っているうえ、新規の融資実行は抑制しているため追加的損失の発生するリスクは限定的」(関係者)としているが、地価の下落基調に今のところ歯止めがかかる兆しはない。メガバンク幹部は「先行きの業績不透明感を払拭するには説得力に欠ける」と指摘する。