ピーター・T・グラウアー ブルームバーグ会長--金融市場縮小の今こそアグレッシブに攻める
最悪期を脱しつつあるものの、いまだ世界の金融機関は危機のただ中にある。その金融機関を顧客とする金融情報ベンダーにとっても、事業環境は厳しい。この局面を彼らはどう打開していくのか--。世界的な大手金融情報ベンダー、米ブルームバーグのピーター・T・グラウアー会長に話を聞いた。
--ブルームバーグの会長として、今の世界金融危機をどう分析していますか。
景気後退は長期にわたり、アメリカの景気が底を打つのは2010年の第1四半期以降になると見ている。もちろんその前に、インドや中国など、経済対策の効果によって成長するエリアもあるだろうが、グローバルでの本格成長はアメリカ経済、次いでヨーロッパ経済が回復しなければ難しいだろう。
しかも成長局面になったとしても、これまで見てきた経済成長よりも緩慢な成長になると思う。理由はいろいろあるが、今まで過剰な経済状況が長期にわたり続いていたし、高いレバレッジがかけられていた。リスクやクレジットの配分が適切でなかったので、金融システム自体がそれをクレンジングする必要がある。だから成長もゆっくりとしたペースになると予測している。
--この金融危機がブルームバーグにどう影響していますか。
前08年度は過去最高の業績を上げることができた。しかし、同時にターミナル(ブルームバーグの金融情報端末)を解約する動きも出ている。05年から08年の初めにかけて大幅に拡大してきた金融業界も29万人の人員削減、1・3兆ドルもの損失を出すという厳しい状況だ。その影響でユーザー数自体が減ってきている。足元では減少のスピードが鈍化してきているが、縮小傾向は当面続くだろう。
業界全体の縮小に対応して、われわれも戦略を変えている。ただ、それはアグレッシブな戦略だ。今年は人員を9%増加させ、投資額も数百万ドル規模で増やしていく。今年、来年は攻める年だと考えている。