「夜行列車衰退」は欧州でも起こっている! ドイツが廃止を発表、各国で波紋広がる
その最大の要因は、他の交通機関との競争激化で、特に航空業界はLCCが急速に勢力を拡大しており、鉄道業界にとっては頭痛の種となっている。また夜行バスも価格破壊によって、長距離便にもかかわらず、一部の座席が「ワンコイン」のような、信じられない低価格で販売されている。
ただし鉄道業界にとって幸いなのは、ヨーロッパの高速バスは低価格を維持するため、現在も横4列の通常座席が主流で、日本のバスのような横3列のリクライニングシート付きの車両は見かけない。前述の夜行列車の乗客のように、多少余分に支払っても横になって行きたいと考える人は、選択肢から外されることも多い。
また、競争の激化により割引運賃の設定が増えたことで、収益が悪化したことも要因の一つだ。シティナイトラインが誕生した1995年、料金体系は非常にシンプルで、優待割引カードやレイルパスのための特別料金以外に割引運賃の設定はなかった。
しかし現在は、特にLCCや格安高速バス誕生の影響もあり、値段を下げざるを得ないのが現状で、夜行列車にもかかわらず50ユーロ以下の運賃設定もあるほどだ。利用者としてはありがたい話で、一定の利用客が見込めるものの、価格を下げ過ぎたことにより収益が悪化したのでは元も子もない。
夜行継続でも座席車両では…
ドイツ鉄道は、シティナイトライン廃止後に、高速列車ICEを使用した夜行列車を運行する意向を示した。昼間は車庫で眠っているだけの寝台車と違って、ICEは昼行用であり、日中も車両の有効活用ができるが、ICEには寝台もなければリクライニングが深く倒れるわけでもない。
単に合理化という、鉄道会社側の都合によるものであるが、乗客側からすれば、サービスが夜間高速バスとまったく変わらず、利用客がわざわざバスより高い運賃を支払って乗ろうと考える付加価値を鉄道に見出すようには思えない。
せめて、翌朝に配る朝食は料金に含み、スリッパやブランケットを用意するなど、夜行列車として相応しい、最低限のサービスを用意しないと、これまで列車を利用してきた固定客をも逃しかねない。
シティナイトラインの撤退は決定してしまったが、列車存続の望みが完全に断たれてしまったわけではない。鉄道業界のオープンアクセスが実現しているヨーロッパでは、同業・異業問わず参入が認められており、すでに複数の企業が、このシティナイトライン各路線への参入に興味を示している。
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