生保業界の見通しはネガティブ:ネガティブ要因がポジティブ要因を凌駕 《ムーディーズの業界分析》

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 一方、格付け上プラスの変化として、国内大手生命保険会社が債券ポートフォリオのデュレーション長期化をすすめていることが挙げられる。これまでよりも長期、あるいは保険負債により対応した期間で、債券ポートフォリオからの収入を確定させているため、金利が低下しても過去にみられたほどのスピードでは逆ざやは発生しないと考えられる。また、国際的な規制の流れとして、逆ざやリスクを厳しく監督しよう、という流れがある。保険負債の時価評価、ソルベンシー�、経済価値ベースのソルベンシー、といった専門用語が、昨今専門家の間で飛び交うが、これらに共通する一つの大きなポイントは逆ざやリスクの厳格評価といえる。一部の国内生保は、このような流れも見据えながら、逆ざやリスク管理の更なる強化に向けて着々と準備を進めているとみられる。

 国内大手生命保険の2009年3月期第3四半期決算においては、第三分野保険や年金保険の保有契約年換算保険料が増加しているケースがほとんどであり、国内生命保険事業の底堅さが確認できた。経済環境は悪化しているが、生命保険事業が長期のビジネスであることや高齢化社会のニーズに合致したものであることから、医療保険や年金保険の事業環境が大きく悪化する可能性は低い、といえる。基礎利益の推移をみると、ある種の会計上のノイズ(最低保証型変額年金保険の損失負担見込み計上、新契約コストの一括計上、株や投資信託などリスクの高い資産からの配当の増減、など)により増減がみられる。しかし、本来的なコア利益は比較的安定しており、これを支えているのが危険差益(想定していた範囲内で死亡や入院患者数が収まったことによるマージン)である。基礎利益の内わけを開示している生保のデータによれば、基礎利益の8割以上を危険差益が占めている。また、危険差益の半分以上が第三分野保険に係る危険差益のケースもあるとみられる。保険契約者にとっても保険会社にとっても、ちょうどよい水準で保険料が設定され、入院や手術の件数が通常考えられる範囲内で収まっている限り、保険会社のコアの収益については当面底堅いと考える。

日本の生命保険会社の格付け

 
保険財務格付け
見通し
日本生命
Aa3
安定的
第一生命
A1
安定的
明治安田生命
A1
安定的
住友生命
A2
安定的
大同生命
A1
格下げ方向で見直し中
三井生命
Baa2
ネガティブ
富国生命
A2
安定的
ソニー生命
Aa3
安定的
太陽生命
A1
格下げ方向で見直し中
ジブラルタ生命
A2
ネガティブ
AIGエジソン生命
A1
検討中
損保ジャパンひまわり生命
Aa3
ネガティブ

2009年5月7日時点


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