渋澤:日本も大きなバブルの崩壊を経験しましたが、それでも人々は普通に生活を続けてきました。中国にも同じことが当てはまるはずです。
藤野:マーケットだから、オーバーシュートはあると思うのですよ。でも、そろそろいいところまで来ているのではないでしょうか。
中野:中国株の下落や中国経済のスローダウンもさることながら、為替も原油価格も、そして日本をはじめとする先進国の株価も、年初から大きく下げています。米国、日本、ユーロの金融政策は、米国が利上げで、日本とユーロは当面、緩和状態。このように、金融政策のベクトルが違うのは久しぶりです。その点でも、マーケットはしばらく荒れるでしょうね。
2016年度の企業業績は厳しくなる
渋澤:2015年の日本の企業業績が好調だったのは、円安で輸出産業の業績が押し上げられ、インバウンドによる爆買いがあったからです。でも、中国からの観光客は昨年8月がピークで、その後は徐々に落ち込んできています。では、もう一段の円安に期待できるかと言えば、これも難しい。
FRB(米連邦準備制度理事会)は昨年12月に利上げを行い、今年も上げることを含む発言しましたが、今年は大統領選挙の年なので、利上げには政治的な思惑に慎重にならざるを得ません。黒田総裁は「何でもやる」とおしゃっていますが、日銀の量的緩和も打ち出し所が難しく、手詰まり感があります。年初からドル/円は円高に振れていますが、構造的なドル高・円安は変わらないものの、今年は大きく円安が進む可能性は低いと年初から見ていました。来期の企業業績はちょっと厳しいかもしれません。
藤野:アナリストにヒアリングしている最中ですが、電子部品は絶望的なまでに厳しいですね。iPhone6Sの売れ行きが鈍く、パソコン需要も落ち込んでいます。為替に関しては、ソニーの第4四半期までの想定為替レートが1ドル=125円であることからうかがえるように、1ドル120~125円を想定している企業が結構ある。1ドル117円前後のまま円安に戻らないと、2016年度決算で下方修正を余儀なくされる企業が増えてくると思います。
電子部品以外のセクターでは、素材や鉄鋼、自動車あたりが厳しいですね。年初からの株価下落は、金融発のものであるという見方が多いけれども、むしろ実体経済の悪さを織り込み始めたと考えるのが妥当ではないかと考えています。そうなると、EPS(1株当り利益)が下がるので、株価の上昇余地が限られてきます。短期的に日経平均株価が2万円を回復する可能性は、低いでしょう。
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