小林製薬、爆買い中国人も飛びつく「神薬」 「熱さまシート」など独特なネーミングで脚光

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小林製薬がニッチ市場に参入した理由が、1956年から本社を置く大阪市道修町にある。ここは、江戸時代から続く「薬の町」。現在でも、第一三共や大日本住友製薬をはじめとした、大小の製薬会社がオフィスを構える。その中で勝ち残るために考え出されたのが、競争の激しい市場を避け、自ら新しい市場を作るという戦略だったのだ。

1969年には、当時まだ珍しかった水洗トイレ用消臭芳香剤「ブルーレット」の発売をもって、日用品市場にも参入。現会長の小林一雅氏が社長に就任した1976年以降は、熱さまシート(1994年)、「ブレスケア」(1997年)など、現在の看板商品が次々と生まれた。

中国人が「薬箱にほしい」と熱望

「サカムケア」などは、ドラッグストアの中国人観光客向けコーナーで、いまや定番になった(スギ薬局神田駅東口店)

必需品ではないが、あると便利。そんな同社の製品に惚れたのは、日本人だけではない。2014年10月、中国の大手ポータルサイト『捜狐』に掲載されて以降、大きな話題となったのが、「日本に行ったら買うべき12神薬」の記事だ。

そこに、小林製薬のサカムケア、熱さまシート、「アンメルツヨコヨコ」など、5つの商品が紹介された。同時に、中国人観光客が押し寄せる大阪や東京のドラッグストアで、これらの商品が”爆買い”の対象になる。一番人気のサカムケアは、「家庭の薬箱に1つほしい」(中国人消費者)とまで言われる人気ぶりで、2015年4~12月期に前年同期比3倍以上の伸びを示した。さすがに日本語の商品名は読まれないものの、「液体絆創膏」の漢字表記と、ささくれた指が書かれたパッケージが効いたという。同社全体では、同期のインバウンド売上高は、国内事業全体の4%で33億円程度にのぼる。今後は、ここで得た海外顧客情報を、現地展開の足掛かりにする考えだ。

小林章浩社長は「海外売上高を現在の1.5倍の200億円にすることが私の使命。まずは、訪日中国人に人気のアンメルツヨコヨコを、現地で展開したい」と息巻く。ナニワのユニーク企業が世界に羽ばたく日は来るか。

印南 志帆 東洋経済 記者

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いんなみ しほ / Shiho Innami

早稲田大学大学院卒業後、東洋経済新報社に入社。流通・小売業界、総合電機業界などの担当記者、「東洋経済オンライン」編集部などを経て、現在は『週刊東洋経済』の巻頭特集を担当。過去に手がけた特集に「半導体 止まらぬ熱狂」「女性を伸ばす会社 潰す会社」「製薬 サバイバル」などがある。私生活では平安時代の歴史が好き。1児の親。

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