マツキヨ、爆買いで死守した業界トップの座 再成長のカギは化粧品と地方のテコ入れ

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インバウンド需要を取り込むマツキヨ。幕張の三井アウトレットモール内にある、新業態の店舗は、免税比率が5割に達する。近くにホテルがあり、訪日客も利用しやすい(撮影:尾形文繁)

「通期の業績を、売上高は前年同期比8%増の5250億円、営業利益を36%増の240億円に上方修正させていただきました」。就任2年目となる松本清雄社長(42)は、11月12日に開かれたマツモトキヨシホールディングス (以下、マツキヨ)の決算会見で、安堵の表情を見せた。

今期は、マツキヨが20年間あまり君臨し続けた「ドラッグストア売り上げNO.1」の座を明け渡す、運命の年になるはずだった。が、それを何とか阻止することができそうだからだ。

今年9月から、「ハックドラッグ」などを展開するイオン系のドラッグストアであるCFSコーポレーションが、同じくイオン系のウエルシアホールディングスに統合されることによって、通期で売上高5200億円弱となることが見込まれていた。5100億円を計画していたマツキヨを抜き、業界首位に躍り出ることも十分にあり得た。

しかし、同日発表されたマツキヨの2016年3月期第2四半期決算によれば、王座はまだ守り切れそうだ。4~9月期は、売上高が2651億円(前年同期比13%増)、営業利益128億円(同92%増)と、前年同期と比べて大幅に躍進。これを受け、会社が上方修正した通期の売上高5250億円は、上期の上振れ分をプラスしただけであり、実際はさらに上振れした着地となる可能性が高い。

抜群の立地で中国人を吸い寄せる

マツキヨの今期の売上高は、会社予想よりも上振れする可能性が高い(撮影:今井康一)

2014年4月の消費増税後、長く続いてきた買い控えから回復した今期。サンドラッグやツルハホールディングスをはじめ、業界は増収増益路線を満喫している。中でもマツキヨは群を抜いて勢いがいい。

その最大の要因は、訪日外国人客(インバウンド)の消費を存分に獲得したことだ。観光庁の調べによれば、来日した中国人のうち、約7割が化粧品や医薬品などドラッグストアの商材を購入している。マツキヨの1~9月期、全体に占める免税売上高の割合は10%で、金額では265億円に及ぶ。食品強化がトレンドのドラッグストア業界において、マツキヨはあくまで化粧品と医薬品で7割という構成に重きを置いていること、そして観光客のアクセスしやすい駅前や繁華街での立地を得意としていることが大きい。

元々「インバウンドは新たなマーケット」(松本社長)として、”爆買い”が話題になる前から着々と準備してきたことが、このタイミングで大きく効いたようだ。

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