白水:そうなのです。あと、最近ではテクノロジーの発展によってビッグデータを集めて学習指導に生かそうという動きもありますよね。オンラインの学習コースを提供しているカーン・アカデミーもそうです。そうした大量のデータを解析すれば、たとえば、微分・積分ができない子というのは実は二次関数でつまずいていることが多くて、二次関数ができない子はもっと手前の未知数でつまずいているというプロセスが見えてきます。「じゃあ君は未知数からやりなおそうか」という指導ができるようになる。
こういった、データ利用で効率的な改善策が打てることは確かにプラスです。しかし、この手法が進化していけば進化していくほど、学びって一本のレールが敷かれていてゴールが決まっているものだけだというスタイルの介入になる。
加藤:とすると、データによる効率化によって、まさに型にはまった子どもを効率的に輩出してしまうことに繋がりかねない、ということでしょうか。
白水:そうです。しかし、だからといってなんでもOKを出すのが個性を生かしている教育だととらえるのもまた極端です。ひとつのゴールにたどり着いたら、次の課題へのスタートが見えてくる。今知っていることから、次に知りたいことは何か、自分で次の問いを考えていく力を付けていくことで、学びのゴールは膨らみ、多様化していくと考えています。
加藤:知性が刺激されて、今までわからなかったことが新たにわかるようになる。ソクラテスの無知の知ではないですが、「わからないことがある」ということがわかったということですね。
親の心構えをどうするか
加藤:では、実際に子どもに自分で考える力を養うには、親はどうしたらいいのでしょうか。
白水:まず心構えの話からさせてください。子どもがわからないとかできないのは全然問題なくて、わからないことやできないことがある方が子どもはいっぱい学べていいんだよってことを親が理解してあげる。親の心構えが変わって安定的になってくると、勝ち負けという軸だけじゃなくて、こっちの軸で考えたら子どものいいところが見えてきたということに繋がりますから。
加藤:親が子どもを見るうえでの基準自体が最も大事ということでしょうか。能力のうえでの優劣で評価するのではなく。
白水:そうです。とはいっても、「勝ち負けがすべてではありません」「違った基準で子どもを見てあげてください」と親に説明してもなかなか心構えや考え方は簡単には変わらないというのが実際のところです。具体的な経験なんかを通じてこんなふうに子どもって評価できるんだと子どものポテンシャルに気づいて引き出せるような支援をしていけるといいですが、これがなかなか難しい。加藤さんが保護者に接する中でも、実体験があるんじゃないですか?
加藤:そうですね。親自身が子どものポテンシャルに気づく必要がある一方、それが実施には難しいことは痛感しています。私がRISUを創業した理念もここでした。教師・ミュージシャン・研究者・銀行員・プログラマーとかいろんな仕事があってそれぞれで求められる力が違うように、教育でも才能もひとつの軸だけで測るのっておかしいと思うのです。21歳まで同一軸で評価されて、突然就活する時になって個性を求められるのでは、教育が社会にでる準備に貢献できていないように思っていて。
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