個別最適の乱立に限界“クボタ標準”への集結を--益本康男・クボタ社長
農業機械(トラクター、コンバイン)で国内首位、小型パワーショベルで世界トップシェアを誇るクボタ。国内の農業人口が減少する中、海外販売強化により順調に業績を拡大してきたが、ここに来て世界的な不況が直撃。2009年3月期は5期ぶりの営業減益に陥る。クボタがかつての勢いを取り戻すためには、売り上げの大半をトラクターなど内燃機関で占める「一本足経営」からの脱却や、アスベスト(石綿)による健康被害問題や公共工事の談合事件を起こした背景にある組織の改革が必要だ。今年1月に42年ぶりとなる技術畑からトップに就任した益本康男新社長。「縦割り組織の弊害と反省」を公然と唱え、改革姿勢を明確にしている。
--世界不況の逆風は、主力の農業機械にも吹き付けていますか。
農業機械の販売は極端には落ちていません。むしろ、中国ではコンバインが、タイではトラクターが伸びています。食料分野に関連する機械という側面もあり、需要が急減することは考えにくいのです。
--09年3月期の営業利益は前期比23%ダウンとなりますね。
市場別に見ると、米国では建設機械とエンジンが打撃を受けていますが、農業機械は高級芝刈り機、レジャービークルなどで減少しているものの、中型クラス(100馬力程度)は大幅な落ち込みに至っていません。欧州も同様にトラクターで極端な減少はなく、建設機械とエンジンが大打撃。そのため、ドイツの建設機械工場は動いていない状況です。欧州拠点に対してはまず、在庫一掃を指示しています。
--欧米以上に海外戦略で重視する地域は、やはりアジアですか。
クボタが今後攻めるのは中国やタイ、インド、そしてベトナムといった成長市場です。
中国は工業化で、人口が沿海側にワーッと移動してきた。それに伴って、日本と同様に農業の担い手が減っている。このため、農作業の効率向上が必要で、高品質かつ故障の少ない日本製品が見直されているのです。中国では間違いなく、農作業の機械化がものすごい勢いで進みますよ。今後はコンバイン以外に、トラクターの投入も計画しています。
同様に、機械化による農作業の効率向上を求められているのはタイです。現在アジアでよく使われている外国製のトラクターは重いので、水田に入りません。一方、日本のトラクターは軽量にできているため、水田や稲作に向いている。タイでも支持されています。