アメリカが史上空前の経済対策を断行、保護主義に突き進むのか?
また、米国の自動車部品メーカーの多くは、ビッグスリーに依存するのと同じように日本からの進出組に依存している。GMのサプライヤーの58%、フォードのサプライヤーの65%は、日本および韓国から進出した自動車メーカーにも部品を納入している。そしてこれらの部品メーカーは、連邦議会に大きな影響力を持っている。ビッグスリーよりも多くの従業員を擁しているからだ。米国自動車研究センターによると、07年末現在、米国ビッグスリーの米国内での雇用者数は、時間給労働者と月給労働者を合わせて23万9000人。これに対し部品メーカーは73万2800人と、3倍以上を雇用している。
さらに、日系大手3社が米国で販売する自動車の過半数は米国とカナダで組み立てられている。ホンダでは実に83%に達する。また、日系メーカーが組み立てる自動車の現地調達部品の割合は70%。ビッグスリーにおける80%と比べそれほど低いわけではない。20年ほど前と異なり、反日的な保護主義は、米国の部品メーカーにも、大きな損害を与えることになる。
バイアメリカンの牙は抜かれた
世界が米国の保護主義を懸念した第二の事件は、連邦議会が緊急経済対策法案に「バイアメリカン」条項を盛り込もうとした動きだった。当初はすべての事業で米国製の鉄鋼のみの使用を義務づけるという内容だった。上院ではさらにこの義務をすべての製品にまで拡張した。
「バイアメリカン」は新規の立法ではない。もともとの「バイアメリカン法」は、大恐慌当時のハーバート・フーバー大統領の署名により1933年に成立したもので、今日まで効力を持ち続けている。いくつかのマイナーな除外規定付きながらも、ハイウェーやダムなどの連邦政府予算が付いた建設事業では、米国内で製造された製品の使用が義務づけられている。たとえばサンフランシスコとオークランドを結ぶベイブリッジを90年代に再建する際、カリフォルニア州の納税者は4000億ドルを余分に支払わなければならなかった。輸入品の鉄鋼が米国製と比べて少なくとも25%安くないかぎり米国製の鉄鋼を使用しなければならない、と義務づけられていたためだ。
今回の法案は既存の法律の強化を志向するものだった。たとえば、カリフォルニアの例のように、従来の法律であれば、輸入品がずっと安い場合は輸入された鉄鋼を使用することができた。だが新たな法案では、インフラ整備事業に関して外国から輸入された鉄鋼は「いっさい」使用を許さないとしていた。