日本人はビジネスでの「音」の力を知らない

「音の参謀」が明かす耳から顧客を掴む方法

しかしそうした人たちでさえ、音によって自分がどのような影響を受けているのか、考えたことのある人は少ないのではないだろうか。また、美術館の学芸員が美術品を選定・保管するように、いろいろな音を効率的に選ぶ方法があることに気づいている人も少ないように思える。

音に内包される情報

音にはたくさんの情報が詰まっている。音に触れることで、誰かが自分に何かを売り込もうとしていることに気づいたり、あのときあの場所でなぜ自分はあんな風に感じたのか気づくことも多い。身の回りの音にもっと意識が向くようになれば、自分自身のことがもっとよく理解できるようになるはずだ。また、もっと脳を使うようになるかもしれない。音に対して敏感な人でも、まだ気が付いていない音はたくさんある。

誰でも意識すれば、日常生活に影響を与える音が聞こえるようになる。いままで意識しなかった音が聞こえるというのは、たとえて言うなら、暗闇で暗視ゴーグルを身に着けるようなものだ。スイッチを入れたとたん、さまざまな予期せぬ音に出くわす。例えば、ラスベガスのカジノに響くコインのジャラジャラという音やスロットマシンのカシャーン!という音。客のテンションは上がりっぱなしだ。ちなみに、ある研究によるとスロットマシンの音や音楽をずっと聞いていると、勝った額を実際よりも24%多めに見積もる傾向があるという。

私たちは自分の居場所を選ぶときも、無意識に音からの情報に頼っている。レストランへ行くと隅っこの席を選ぶのは、そこが静かだからだ。賑やかなバーが好きなのは、そこにいると自分が何かエキサイティングなシーンに立ち会っているかのような、高揚した気分になるからだ。今度ショッピングモールに行く機会があったら、店の前を通り過ぎるとき、どんな音がするか耳を澄ましてほしい。センスのある店ほど、高級洋服店が服を仕立てるように、丁寧にサウンドトラックを選ぶものだ。顧客ターゲット層の価値観を把握している証拠だ。

音をビジネスに活用する

たとえば、アパレル大手のGAP。顧客の価値観をビジュアルに表現しているのが一目でわかる。きちんとたたまれ、整然と並べられた商品、清潔で明るい店内、アイコニックなロゴマーク─―(2010年にGAPがロゴを一部変更しようとした際、それに反対するファンの間で騒動が起きた。同社はすぐさま変更を撤回した経緯がある)。

店内で流れる音楽は、ビジュアルに表現された顧客の価値観とマッチするものでなければならない。すなわち、流行に合っているが流行を追いかけているわけではなく、陽気だけども決して押しつけがましくない。GAPのファンはそんな商品・サービスを求めているのだ。ロゴ同様、音楽もブランドイメージを左右する。GAPの店内に足を踏み入れたとたん、スピードメタルや大音響のラップミュージックが聞こえたらどんな気分になるだろう? 想像するだけで、音楽の重要性がわかるはずだ。

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