ワールド、初の外部出身社長が変えたこと 復活期すアパレルの雄、決算から見えた展望

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ベーシックからトレンドまで幅広い商品を取り揃える「シューラルー」

崖っぷちに追い込まれていた大手アパレルメーカー・ワールドが、すんでのところで踏み止まった。

「アンタイトル」や「タケオキクチ」などの著名ブランドを抱える同社は、1993年に商品企画から小売販売まで手掛けるSPA(製造小売業)へ転換。アパレル業界が、かつて春夏秋冬の四季ごとに需要予測や在庫管理などの商品政策(MD)行っていた中で、ワールドは週ごとの52週MDにいち早く取り組み、2007年3月期に過去最高となる営業利益213億円を叩き出した。

しかし、商業施設(SC)向けの出店を加速させたことでオーバーストア状態となり、競争が激化。リーマンショック以降は、ユニクロやZARAなど低価格ファッションの台頭に侵食され、前2015年3月期の営業益は52億円にまで縮小した。それも実はIFRS基準に会計基準を変更したことでのれん償却40億円の計上を免れており、旧基準であれば赤字転落の瀬戸際に立たされていたのだ。

「再生請負人」がリストラに着手

窮地に陥ったワールドの復活を託されたのは、外部出身の上山健二氏(50)だ。上山氏は1988年に住友銀行(現三井住友銀行)に入行。その後、ジャック(現カーチスホールディングス)社長、長崎屋社長、GABA社長、ぐるなび副社長などを経て2013年12月にワールドに入社。経歴を見てもわかるようにプロ経営者であり、会社更生法下にあった長崎屋の再生では、計画より12年早く更正手続きを終結させた実績がある。

上山氏は2015年4月、「再生請負人」として、創業家以外で初めてワールドの社長に就任。最初に手をつけたのが大規模リストラだった。具体的には1年以内に、全体の1割強に相当する10~15ブランドの廃止、全店舗の約15%に当たる400~500店の閉鎖、そして人員削減だ。

「聖域を設けず、あらゆるコスト削減を貫徹する」という方針の下に走り出した2016年3月期。上山社長が就任して半年経った上期(2015年4~9月期)の売上高は1355億円と前年同期比3.3%減となったが、営業利益は30億8900万円で着地。前年同期の9500万円の赤字から黒字転換した。

上期に大きく絞り込んだのは物流費や販促費など。廃止したブランドは2つ、閉鎖したのは181店。「SCとの契約もあり、ブランド廃止や閉店は下期に集中する」(広報)と計画通りに構造改革は進んでいるようだ。ただ、不採算店舗を閉鎖しても原状回復などの一時費用もかかるため、本格的なコスト削減効果が期待できるのは来2017年3月期以降となる。

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