「赤ちゃん顔のひな人形」が売れまくる理由 旧慣習を覆した「節句人形SPA」の挑戦とは?

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縮小
手のひらにのせて愛でるのにちょうどいいサイズ

ふっくらとした丸い輪郭にぱっちり目のあどけない表情。パステルカラーの衣装に包まれ、5歳くらいの子どもの手のひらにちょうどおさまる小さなサイズ――。

20~30代の若い母親の間で人気を集めている「ふらここ」のひな人形だ。ここ数年、11月の販売開始から注文が殺到し、業界で商戦がピークを迎える1月半ばにはほぼ完売。縮小の一途をたどる節句人形市場において、年々売り上げを伸ばしている。

老舗人形店からの独立

ふらここの原英洋社長。大学卒業後、出版社に就職したものの、若くして父親が急逝。家業に携わることになった

ふらここの設立は2008年。伝統業界における“新参者”のベンチャーだが、実は創業者の原英洋社長が生まれ育ったのは100年以上続く東京・浅草橋の有名人形店。自らも店頭に立ち、20年以上にわたってひな人形の販売に携わってきた。が、その現場でつねに感じていたのは、作り手と買い手の間に横たわる深い溝だった。

多くの客は「どうせ1年目しか飾らないから」と言いながら商品を選んでいる。1回しか飾らないのは、雛飾りが大きくて飾りにくいからだ。だからといって、小さい商品には「安物」というイメージがまとわりつく。その背景にあるのは祖父母が孫に贈るギフト商品という認識だ。大きいものこそ満足度が高い。作り手も売り手も、購入されたひな人形が家庭でどう飾られ、どう楽しまれるかなんて考えることもなかったのだ。

「お客様が本当に欲しいと思うひな人形を作りたい」。そう考えた原氏は、商品開発にも力を入れた。ところがだ。職人に客の声を届けると「専務(当時)、お客様に迎合するんですか」と問われる始末。このままでは客の望む商品は作れない。家業を妹夫婦に託し、店を飛び出した。そして設立したのがふらここだ。

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