「赤ちゃん顔のひな人形」が売れまくる理由 旧慣習を覆した「節句人形SPA」の挑戦とは?

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たとえば、着物から出ているほんの1mmにも満たない糸のほつれを取り、小さなはさみで前髪をそろえ、髪飾りの結び目を整える。検品作業にあたるスタッフの半数以上が子育て中の母親だ。購入した母親の気持ちになると、人形のほんの小さな乱れも見えてくるのだという。

検品作業を進める女性スタッフたち。購入者である母親の目で人形をチェックする

またこうした女性従業員の目が、実際の商品開発に生かされることも多い。ふらここのひな人形は、同じ顔でも毎年少しずつ改良を重ねている。社長が中心となっていくつかの候補を絞ったうえで最終的には従業員の投票で決めるが、「女性の意見が外れたことはない」と原社長は言う。

「私も職人も男性なのでお客様の好みは推測するしかない。でも同じ年代で同じような境遇の女性のほうが、ストレートにわかるのでしょう。私が予想もしていなかった顔が選ばれることもある」

創業時からパートで働いてきた女性2人はいまや正社員となり、社長の右腕として活躍している。現在は16人の従業員のうち正社員は5人だが、今後もパートから正社員への登用は積極的に進めていくという。また来年4月には、初めて新卒入社の新人が3人入社する予定だ。

少子化でも市場は広がっている

節句人形業界では、縮小し続ける市場に対してもう何年も「少子化」「節句離れ」という言葉が使われてきた。だが、原社長に言わせれば「少子化といっても毎年100万人の赤ちゃんが生まれている。節句離れは、消費者が買いたいと思える節句人形がないから離れているだけだ」という。100万人の市場にまだわずか2000セットを売っただけ。まだまだ開拓の余地はあると胸を張る。

ふらここには連日、購入者から感想を記した便りが何通も寄せられる。つい先日も、原社長のもとにこんなメールが届いた(一部を抜粋)。

「念願のおひな様が本日手元に届き、主人、娘ともども本当にうれしく思っています。
やっと授かった娘に、かわいいふらここさんのお雛様を買ってあげたいとぼんやり考えていたのですが、生まれてすぐに病気がみつかって長期入院することになり、病院のベッドの上でカタログを拝見しました。
将来を考えるとどうしても昨年は注文することができず、いつか元気になったら買ってあげたいと願って過ごしておりました。昨年は私が手作りした小さなお雛様を病室に飾りました。
今年は家族で雛祭りを迎えることを本当に楽しみにしております。そして、その日々が毎年続くようにおひな様に見守ってもらいたいです。」

 

ひな人形は子どもへの思いを込めて選びたい――。そんな消費者の気持ちをふらここのひな人形はしっかりと受け止めている。

堀越 千代 東洋経済 記者

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ほりこし ちよ / Chiyo Horikoshi

1976年生まれ。2006年に東洋経済新報社入社。08年より『週刊東洋経済』編集部で、流通、医療・介護、自己啓発など幅広い分野の特集を担当してきた。14年10月より新事業開発の専任となり、16年7月に新媒体『ハレタル』をオープン。Webサイト、イベント、コンセプトマガジンを通して、子育て中の女性に向けた情報を発信している

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