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米フェイスブックの創業者、マーク・ザッカーバーグ氏とその妻プリシラ・チャン氏は2015年12月、自社株約450億ドル(約5・3兆円)を寄付すると発表した。慈善団体ではなく投資会社に寄付するという。このため、営利目的に使われる可能性もある。
ザッカーバーグ夫妻の決断については、「宣伝目的だろう」との非難の声も出ている。「彼はポケットのお金を別のポケットに移しただけで、かなりの宣伝効果を手にする」などの批判もある。
新たな「インパクト投資」
しかし、実情は異なる。夫妻が選んだのは、従来型の慈善目的の寄付と、「インパクト投資」といわれる新タイプの寄付との組み合わせであり、これからの時代に最もふさわしい寄付のあり方と言える。
従来型の慈善目的の寄付は、役所の要求に応じたり、株主還元したりといった義務感にとらわれることがない。大胆なアイデアの実現のために資金提供したり、解決までに数十年間を要するような社会問題に対しての資金支援もできる。
こうした従来型の寄付は一か八かのベンチャー投資のようなものだ。プロジェクトの多くが利益を生み出せないと薄々知りながらも、その一部がブレークスルーを起こし、成功することに賭けるのだ。
一方で新しい寄付の形であるインパクト投資は、ロックフェラー財団主催の会議で07年に生まれた言葉だ。株式投資のように、寄付金が利益を生み出し、結果的に資金回収につながることをより重視する。
インパクト投資への資金流入は急速に拡大してきた。主にベンチャー投資の世界で、ザッカーバーグ夫妻のように、慈善目的の寄付とインパクト投資とを組み合わせて資金を拠出する例が増えているからだ。