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2008年の世界金融危機の原因は、政府や中央銀行による市場への過剰介入にあったのか、あるいは介入不足にあったのか──。学生の小論文のテーマにこんな問いを思いつく教授は私だけではないだろう。私が教えている学生の反応は、大きく3つに分かれた。
約3分の1の学生が主張したのは、政府こそが諸悪の根源だったということだ。学生らは政府による下手な介入が原因で、また米政府が支援していた住宅ローン保証会社などにも市場の効率性を歪めた原因があったと指摘した。「最後の貸し手」である米連邦準備制度理事会(FRB)の存在自体を非難した学生もいた。
他の約3分の1の学生は、危機前にFRB議長だったアラン・グリーンスパン氏こそが悪者だと答えた。学生たちは、バブルの様相を呈した状況でもグリーンスパン氏が介入を見送ったことが、結果的に危機につながったと指摘する。先進国の政府による規制緩和も市場の暴走を許したと主張した。
残りの約3分の1の学生は、政府はある分野では過剰に介入したが、別の分野では介入不足だったという、いわば2つの回答を足して割ったような見解を示した。
各国はあいまいな姿勢に終始
金融危機から7年間が経過した。前述の問いに欧米政府や有権者はどう答えてきたのだろうか。
各国の政策や関係者の証言から判断すると、ほとんどの政府はどちらともいえない、あいまいな姿勢に終始してきた。確かに各国政府はさまざまな規制を施し、金融機関の監督も強化した。一方で金融機関が経営難に陥っても、政府や中銀は支援しないと決めた国も多い。つまり「銀行は大きすぎるので潰せない」という常識を覆したのだ。
このあいまいな姿勢が、将来的に市場に規律が戻ると予見してのものなのかどうかはわからない。各国の規制当局は、経営者に責任を押し付けたかっただけかもしれない。
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