では有権者はどうか。多くの国では金融危機後の選挙で左派か右派かを問わず、金融危機時に政権を握っていた政党が議席を減らし、別の政党に取って代わられた。米国、英国、フランスなどはその典型だ。フランスは右派から左派に、英国は逆に左派から右派に政権が移った。有権者は金融危機時の政府に、舵取りを誤ったとして退場勧告を突きつけたのだ。
政府や有権者の対応については最近、ある傾向も明らかになっている。ドイツのエコノミスト3人が過去150年間にわたる国内外の800もの選挙について調べたところ、平均的に金融危機後の約5年間で、右派への投票率が約3分の1増加することがわかったのだ。
実際、1929年のウォール街の大暴落や、90年代初頭の北欧諸国の金融危機などでは、調査結果のような傾向が見られた。今でもフランスでは国民戦線が勢力を伸ばしているが、オランド仏大統領の不人気が原因だとは言えない。極右の台頭という、より大きな力が働いている背景がある。
欧州の金融危機収束は遠い
前述のドイツのエコノミストらは、昨今の別の傾向も指摘している。金融危機後には、多くの国で政権運営が困難になるとの見方だ。
これには極右の台頭などによる政権与党の求心力低下、またストライキや反政府デモといった大衆運動などの影響がある。実際、多くの国では金融危機後、反政府デモが3倍、暴動の発生頻度が2倍に増えたという。こうした傾向は最近のギリシャの事例を見ても明らかだ。
同エコノミストらの調査によると、金融危機の後は5年も経てば最悪期を脱するという。ただし昨今の欧州の状況はとてもそうとは言えない。おそらく危機が完全に収束してから約5年間の月日が必要であり、欧州はまだその段階に達していないということだ。
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