三菱地所は街づくりを仕事としています。仏教に「衆生の善根を開発する」という言葉があるそうで、開発は「カイホツ」と読む。生きとし生けるものが本来備え持っている特性を開いて発揮させることがカイホツだそうです。これは三菱地所が行っている開発とぴったりです。
日本は人口が減っていき、不動産業が衰退するかのような意見がありますが、まったく違いますね。やることはいくらでもある。人間は宙に浮いて活動できないでしょう。働く、住む、勉強する、憩う、行楽する。人間が活動するところは、ぜんぶ不動産です。特に街づくりは文化の継承という点で非常に大切な役割を担っていきます。今の日本は、野山を切り開いて、新たに開発する必要はありません。問題は、すでにある街をどう再生するかです。
不動産業は夢のある仕事
都市の再生とは、その土地の歴史や文化、人の営みといったものを尊重しながら、新しい時代のニーズに応えられるように造り替えていくことです。そうした点で不動産会社の役割は、デベロッパーというよりプロデューサーというべきです。これはすごく夢のある仕事です。
自慢めいて聞こえるかもしれませんが、丸の内を歩いていると、以前と比べいい街になったと思いますね。でも、もっと多くの人に訪れてほしい。もっとにぎわいを出せないか。これは線引きが難しくて、あまりごちゃごちゃした街になると品位というか雰囲気が損なわれる。にぎわいと猥雑さは、定量化できない微妙な感性によっているのでしょう。
この4年ほど東京国際フォーラムとその周辺で、ゴールデンウィークに「ラ・フォル・ジュルネ」という音楽祭が開かれており、三菱地所もスポンサーとして応援しています。屋外も含めて、東京国際フォーラムと丸の内一帯が音楽会場になっている、とても楽しいイベントです。
この音楽祭の本家であるフランスのナントに実際に見に行ってあらためて感じたのは、バッハ、ヘンデルといった音楽家たちが、今も私たちの心を揺さぶるすばらしい作品を残せたのは、当時の領主なり資産家なりが彼らを庇護し、援助したからだということです。
もちろん現代にこうしたパトロンはいない。それができるのは企業くらいしかありません。フランスに行って企業のメセナがもっと盛んにならなければと思いました。不況の世の中ですが、企業は社会的な存在として、いろいろできることがあるのではないか、そう考えています。
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