【福澤武氏・講演】日本企業文化へのパラダイム転換(その2)

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東洋経済新報社主催フォーラム
「理念重視型経営が創る成長基盤とリスク管理」より
講師:福澤武

その1からの続き)

●救いの手を差し伸べられない状態に日本は追い込まれていた

 1997年の秋というのは、日本の一つのターニング・ポイントだったのではないかと思っています。山一證券や北海道拓殖銀行が破綻したのですね。もしこれが戦後のアンシャンレジームの時代だったら、破綻させなかったと思います。何らかの救いの手を差し伸べて、内容的には潰れて新しく会社を建て直すことになったと思いますが、あんな風にドラスティックに破綻するものは破綻させてしまえとはやらなかったはずです。それは、救いの手を差し伸べることもできない状態に日本は追い込まれていたからだと思います。
 北拓が潰れたら、北海道経済にどれだけ大きな影響を与えるか。それから山一證券で言えば、四大証券の一角が崩れたら、どういうことになるか。山一は以前にも一度潰れていますが、そのときは大事にならないように何とか周りから手を差し伸べていました。しかし、今度はもう潰れても止むを得ないのだという。それは大変な影響を与えるわけです。それでも構わないということで、ああいう大きな金融機関が潰れたわけです。これを見まして、私はもう世の中は変わったと思いました。これは今までと同じような考えでやっていたら大変なことになるぞということを痛感したのです。

●世の中が大きく変わっていく、その中での経営を考えなければならない

 それから数年後の正月。テレビを点けますと堺屋太一さんが出ていて、その脇におなじみの経営者が6~7人ずらりと並んでいました。堺屋さんがその経営者たちに紙を配って、「これに、今年捨てるものを書いてください」と言ったのです。それでみんなが何やら書いて、「では皆さん、それを開けてください」ということになりました。すると半数が「常識」と書いていたのです。要するに、経営者が常識だと思っていたことにとらわれていたらダメだとはっきり自覚した、そういうことだと思うのですね。私はあのテレビではっきりと分かりました。世の中が大きく変わっていく。その中での経営というものを考えていかなければならないと。
 しかし、そんな変化にすぐ対応できる人と、なかなかできない人がいます。抵抗勢力というか、改革しようとすると、そんなことは非常識だという。要するに日本の戦後アンシャンレジームの時代の常識を金科玉条としている人たちにとっては、それと反対のことをしようとすると、非常識だと映ったわけでしょうね。しかし、そこでその非常識で以ってやっていた企業が生き延びたのだと思うのです。
その3に続く、全7回)
福澤武(ふくざわ・たけし)
慶應義塾大学法学部卒業後、1994年より三菱地所株式会社・取締役社長、2001年より同取締役会長、2007年より取締役相談役を経て現職。同相談役を務める傍ら、大手町・丸の内・有楽町地区再開発計画推進協議会会長、千代田区教育委員、日本アスペン研究所理事など幅広く活動。著書に『「丸の内」経済学』(PHP研究所)など。
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