隅修三・東京海上ホールディングス社長--エネルギーは内向きより外向きに拡大させていく
--この10年、損保市場はずっと縮小してきました。ここでまた何年かを内向きのエネルギーで取られるのがもったいないと……。
04年から4年がかりでシステム基盤からすべてを入れ替えて、構造改革をやってきました。これが今、動き始めています。この力を使わない手はない、他社はそれができないのです。2011年には構造改革のファーストステップが、大きいところは出来上がります。
--そのときの東京海上HDの姿はどうなっているのでしょうか。
今まで東京海上HDは業界のトップでしたが、仕事のやり方や代理店の仕組みは、他社と基本的にほとんど差がありません。今までの東京海上は、他社もそうかもしれませんが、やや精神論的に頑張ってきた、という面が少なからずあります。
それをもっと科学で勝負していく。いろいろなデータを駆使し、相手に説得力のある企画書を作成し、相手の分析もできる。もっと科学で商売する会社に変わっていけると思います。システムはもともと単独では動きません。今までのシステムは、いわゆる「機械化」という言葉で表されるように、人間が行う作業を機械に置き換えただけのものでした。そういう意味の延長上にあったシステムから、もっと人間の企画力をサポートできるような仕組みができつつあるのです。
--具体的には。
「Tネット」という新代理店システムによって、保険の受け付けから事故処理対応まで、ほぼペーパーレスでできるようになりました。たとえば、ある代理店はTネット稼働前、1日に100通のファクスを東京海上日動の支社とやり取りをしていたそうですが、稼働後はゼロになった。さらにシステムでエラーもチェックしますから、間違いがないし、極めて時間が合理化できたというのです。バックオフィス業務を合理化することで、考える時間と行動する時間が生み出せるわけです。
また、本格的な顧客分析、データマイニングも可能となった。こうした武器を渡すことで、空いた時間に品質向上やサービス向上などの課題をこなせるようになったのです。