隅修三・東京海上ホールディングス社長--エネルギーは内向きより外向きに拡大させていく
矢継ぎ早の経営統合が打ち出された損保業界--。1月に三井住友海上グループホールディングス、あいおい損害保険、ニッセイ同和損害保険の3社が、3月には損保ジャパンと日本興亜損害保険の2社が2010年4月に統合すると発表。損保は東京海上ホールディングスと合わせて3メガ体制が誕生する。
少子高齢化・人口減少と世界的な金融危機という、内外の逆風が背中を押した再編第2幕といえるが、東京海上HDにとっては損保業界の盟主の地位を脅かされることとなった。三井住友海上GHDを軸とする3社連合が統合すれば、国内損保事業収入を表す正味収入保険料(一般企業の売上高に相当)で国内トップに躍り出るからだ。
ただし、3社連合と東京海上HDとの正味収入保険料の差は5600億円程度(直近3期平均)。一方、海外事業や生保事業などの売り上げも加味した経常収益ベースでは、東京海上HDが3社連合を1500億円ほど上回る。経常利益や総資産も同様だ(下グラフ参照)。隅修三・東京海上HD社長も「焦りはない」と、冷静を決め込む。
同業他社と異なる東京海上HDの特色は海外事業戦略にある。この10年、当初はアジアやBRICsを中心に投資実績を積んできた。だが、世界の保険市場でグローバルプレーヤーとして認められるには、成熟市場であり競争も熾烈な欧米で存在感を示す必要があると判断。07年10月に英ロイズ保険市場を足場に世界展開する保険グループ・キルン社を、08年3月には米国の中堅損保グループのフィラデルフィアを買収した。
悲願の欧米亜3極体制の構築に踏み出し、今後も「規律あるM&A」(隅社長)というルールにのっとって、優良な買収案件があれば積極的にM&Aを展開していくという。
だが、目下のところ、同社が最も注力しているのは、国内損保事業の改革だ。「量から質」への転換を訴求し、04年から進めてきた国内損保事業の収益構造の抜本改革は、11年に一つの区切りを迎える計画。
その区切りを迎える前に、動き出した一つの仕掛けが、警備サービス業首位のセコムとの提携である。保険業界以外の異業種とのコラボレーションが、同社が導き出した国内損保市場を勝ち抜く一つの「解」でもあるという。隅社長が描く再編第2幕後のシナリオを聞いた。