ISは確かに、われわれの生活を脅かす害虫だ。しかし、米国の有権者と世界の人々が大統領候補に期待しているのは、その害虫が発生した理由と、他の地域での再発生を防ぐ策を説明することだ。知識と知恵を示せば、有権者たちはその候補者が適切な対策と思考手段を持っていることを確認するはずだ。そして、その対策と思考手段は、単に状況に対処する以上のものでなければならない。
たとえば、同盟が米国の平和に果たす重要性についてだ。確かに第二次世界大戦の終結以降、同盟は重要であった。しかし、テレビ討論会でも選挙遊説でも、候補者らは、過去70年間の安全保障体制の役割を、ほとんど評価していないようにみえる。
米国民は、国内の問題や課題に対処するには痛みが伴うことを、ますます理解している。しかし、外交的問題や課題になると、米国が望むものを常に手に入れることができないとの認識は、米国人の自由や安全を守る上では弱さの表れに見えてしまう。ドナルド・トランプは、この傾向をより極端にとらえ 、共和党候補者の支持率で首位に立った。
トランプ氏の「再び米国を偉大にする」との公約は、真実に基づいてはいない。実際には過去1世紀にわたって、アメリカはすでに偉大であり続けている。トランプ氏の不器用なスローガンが避けている挑戦は、米国を偉大に保つこと、そして、複雑な国際的舞台でうまく立ち回ることだ。そうすることで、友好国が米国の偉大さに疑問を感じず、敵国が攻撃してこないようにするのだ。
古臭い標語や毒舌は判断材料にならない
持続可能な外交政策とは八方美人になることではない、と大統領候補は、有権者に明示せねばならない。国政で成功を収めるには、良い選択をするとともに、政策が意図した結果をもたらすことを確実にする必要がある。
オバマ大統領が批判されてきたのは、多くの問題について、代償は何であるか理解せねばならないことを一貫して示してきたためだ。確かに、実際の職務に就いてから学ぶのに代わるものはない。それでも、有権者は、使い古されたスローガンや政治的な毒舌以上のものを聞かない限り、2016年11月に十分な情報に基づいた選択をすることはできない。
選挙運動は、米国が一連の難問に直面している時に過熱する。中国の国内事情や南シナ海での領土問題にどう対処していくのか?ロシアのクリミア併合は永遠に続くのか?中東に地上部隊を送るほかに手立てはあるか?
米国民がどの候補者を支持するかを決める際に、このような質問は避けられない。良くも悪くも、これらの問題を真剣に質問する機会が国民に与えられるかどうかは、候補者自身に大きく左右される。
(C)Project Syndicate
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