「正社員激減」コロナ不況が招く働き方の大変革 「正規と非正規の格差」が解消される期待も

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今後、失業率が上がり、賃金が下がり、その先はどうなるのでしょうか。仮に年内にコロナが完全に終息したら、1年後、雇用は元の状態に戻るのでしょうか。

今後を占うカギになるのが、すでに日本の労働者の3分の1を占める非正規労働者への対応です。日本では事実上、正社員を解雇できないので、コロナのような危機に直面して企業は、非正規労働者を雇用の調整弁にします。そのため、「危機でも雇用を守られる正社員の安定」と「雇用を脅かされる非正規労働者の不安定」が、改めてクローズアップされます。

今、労働者や就活に臨む学生の間では、「正社員が絶対条件。非正規で働くってあり得ない」「やっぱり大手企業のほうが安心」と正社員志向・大企業志向がにわかに強まっています。

政府は、労働者派遣法の改正やキャリアアップ助成金など、非正規労働者を正社員に転換する政策を推進しています。

とりわけ就職氷河期(1993年卒から2004年卒)の非正規労働者に対しては、昨年6月に閣議決定した“骨太の方針”で「今後3年間で30万人を正社員にする」ことを目標に掲げ、正社員化に取り組んできました。コロナを受けて、これらの政策をさらに強化しています。

「正社員採用」を抑制する動きも

しかし、労働者が希望し、政府が後押ししているからといって、すんなり正社員化が進むものでしょうか。雇う側の企業の事情も考える必要があります。

企業から見て正社員は、今回のように事業活動がストップしても解雇できず、給料を払い続けなければいけません。経営者は、正社員が経営の重荷であることを今回、改めて思い知らされました。企業経営者6名に取材したところ、全員が「今後、正社員の雇用を抑制する」と答えました。以下は印象的なコメントです。

「正社員の採用には慎重にならざるを得ない。今までは単純な業務や臨時の業務で非正規を補助的に使っていたが、中核的・専門的な業務でも非正規を活用し、できるだけ正社員を減らしたい」(食品)

「来年の新卒採用を抑制するが、一時的な措置ではない。本当に幹部候補として期待する人材はもちろん正社員で採るが、それ以外は正社員を採用しない」(オフィスサービス)

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