黒人差別を肯定した「風と共に去りぬ」のヤバさ オスカー受賞でも差別された黒人女優の悲劇
アメリカで人種差別撲滅のための「Black Lives Matter」運動が続く中、映画『風と共に去りぬ』がストリーミングサービス「HBO Max」の配信ラインナップから削除されたことが話題を呼んでいる。
映画史に残る不朽の名作が問題視された理由は、「奴隷制を肯定的に描いたり」「南部戦争以前の南部を賛美したり」しているからだと言われている。
「問題と思われるシーンがあるなら、そこを削除すればいいのでは」という意見も聞いた。しかし、それでは問題は解決しない。
“不朽の名作”はなぜ削除されたのか?
今、どうしてこの映画が問題視されるのか。それを語る前に、背景をクリアにしておきたい。まず、配信中止を決めたのはワーナーメディアのストリーミングサービスHBO Maxのみで、アメリカで『風と共に去りぬ』が見られなくなったわけではない。また、HBO Maxの措置は、あくまで一時的なものである。
次に、ワーナーメディアは、抗議デモが起きたのを受けて配信を中止したのではない。オスカー受賞歴のある黒人脚本家ジョン・リドリーが、日刊紙L.A. Timesに、HBO Maxを名指しする意見記事を書いたから、慌てて削除したのだ。リドリーに言われなかったら、おそらく今も平気で配信を続けていただろう(リドリーから名指しされなかったアマゾンプライムは今も配信を続けている)。
現に「Black Lives Matter」運動の発端となった、ミネアポリスでジョージ・フロイド事件が起きたのは5月25日だったが、その2日後にサービス開始したHBO Maxは、6月8日の夜にリドリーの記事がオンライン版に出るまで、トップページに堂々と『風と共に去りぬ』を配信ラインナップの1つとして表示し続けていた。
実のところ『風と共に去りぬ』に対する批判は、以前から言われてきたことだ。ワーナーメディアも、まったく知らなかったわけではないだろう。ただ、それほど留意すべきことだとは思っていなかったはずだ。
少なくとも、「Black Lives Matter」運動と結びつけて考えることはしていなかった。そこへ、リドリーから突然、「この映画は南北戦争前の南部を美化し、奴隷制度の残酷さを無視するもの」と指摘され、問題に気づいたのである。
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