「精神病床数」が世界一レベルに多い日本の異様

精神疾患を持つ人の出口戦略を考えるべきだ

ところが日本は1960年代の高度経済成長の時代から極端な右肩上がりが始まり、まるで持ち家政策が発動されたのではないかと勘違いするような展開になっている。高度経済成長期以前にあった郊外の結核用サナトリウムの転用も一因だった。不治の病と恐れられた結核は抗生物質の発達で治療効果が上がり不必要で空院となり、精神科病棟へ転換して入院患者を埋めるようにした。私宅監置など座敷牢的な処遇からすれば、近代化のプロセスといえなくもない。

ところが入院病床数はそのまま減るどころか増え続けた。1980代から1990年代がピークでその後も微減でしかない。精神病床数(人口1000人当たり)はダントツで世界一なのだ。しかも平均在院日数は1カ月以内の先進国が多いが、日本だけが9カ月と、これもまたダントツである。異様な風景である。

現在、精神疾患による入院患者数は28万人(2017年厚労省調査)、1年以上の入院患者は6割・17万人、5年以上は3割・9万人もいる。明らかに日本独特の課題がある、と診断できる。日本には優秀な精神科医がたくさんいるはずなのに、なぜこうなってしまうのか。

ベッド数を多くして稼ぐビジネスモデル

精神科病院に対する日本政府の政策としては「ハンセン病問題」と同根の考え方、19世紀から始まる隔離収容政策があった。ヨーロッパでもこうした隔離収容政策は存在した。だが、すでに図で示したように、入院患者数が激減し始めている。ではこの差はどこにあるのか。

NHK『クローズアップ現代』(2014年7月24日放映)で証言した男性は、1968年、16歳で上京したが職場での慣れない環境や人間関係のストレスから体調を崩し、妄想などの症状があらわれ統合失調症と診断され、都内の精神科病院に入院した。

22歳のときに福島の病院に転院して2011年の東日本大震災で被災するまで、40年間も隔離収容されていた。症状はほとんどない状態であるにもかかわらず、退院させてもらえなかった。これはほんの一例で、あたかも終身刑のような事例はしばしば耳にする。

精神科病院が増えていったのは患者に対する医師・看護師数の比率が低い特例基準があるため、また抗精神病薬などの開発が進み、患者が興奮して暴れるなどということが少なくなり、病床数を増やせば増やすほど経営的に利益が出やすい構造が生まれたのも一因ではある。

精神科病院側では自嘲的に「薄利多売」と評している。通常の一般医療なら月額入院費100万円のところ、精神科月額入院費は約45万円と保険点数が低い。ベッド数を多くして稼ぐビジネスモデルである。

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