第1回 「志」とは何か

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「志(こころざし)」を育てる

「自分は何を付加価値として世の中に還元するのか」
 「自分は何のために働くのか」
 「自分の今の時間をコミットしてやるべきことは何か」
と言った、自分起点の「志」を見つけることが重要になってくると私は考えます。
 なぜなら、現在の日本は、少子高齢化、経済のゼロ成長、産業の空洞化といった、厳しい状況に入っており、自ら何かをつかみに行かなければ、誰も何も与えてくれない状況になっているからです。
 しかし、一般的に受験勉強の影響を強く受けた世代の日本人は、人から与えられた問題に正しい答えを出すことには慣れていますが、自らの意志として、何を成しえたいかといったことにしっかりと向き合い、考えることは不得手ないのではないでしょうか。

その結果、志を持たないまま、少なくとも意識をしないまま、淡々と時間が流れ行くといった状況になりがちです。もちろん志を意識しなくても生きていくことはできます。
 しかし私は、志の成長を通じて、より実りの多い人生を歩むことができる可能性が高まると信じています。
 なぜなら、個々人の志の成長は、この連載で示していくように、社会にとっても新しい価値をもたらす可能性が高いものだからです。

しかも、志は何なのかを真剣に自らに問いかけ、その志の実現に向け高いエネルギーレベルを維持しながら実践することを繰り返すことにより、志は成長させることができるのです。

私が研究科長を務めるグロービス経営大学院は、開学以来、「志の発見、醸成」に、力を注いでいます。
 2011年12月には、実際に様々な分野で活躍している数十人へのインタビュー、100名を超える方への仮説検証を通じてまとめた『志を育てる』(東洋経済新報社)を上梓しました。この本は、「志はこうあるべき、志を持って生きるべき」などの「べき論」や「精神論」を綴ったものではなく、つまりファクトベースで志が醸成されていく様子をモデル化したものです。

この連載では、本書の考え方をベースに、6回に分けて各界で活躍されているすばらしいリーダーが、自らの志をどのように醸成していったかについての事例をご紹介していきたいと思います。
 第1回目は、『志を育てる』の概要を見ていきます。

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