いろんな環境に育った人にお話を聞かせてもらう、というのがこの連載の趣旨ですが、「牧師家庭に育った人の人生」というのは、今回連絡をもらうまで想像したこともありませんでした。
牧師、と聞いて最初に頭に浮かんだのは、昔見たアメリカのTVドラマに出てきたまじめそうなおじさんですが、その人には子どもはいませんでしたし、筆者が昔偶然通った幼稚園もキリスト教の系列でしたが、牧師さんはほとんど見かけませんでした。牧師さんの家庭生活も、その子どもの日常も、ちょっとイメージが湧きません。
連絡をくれた諸田ひかりさん(仮名、26歳)は、数年前に洗礼を受けてクリスチャンになったものの、小さい頃は周囲から特別な目で見られることが多く、とても嫌だったといいます。
待ち合わせたのは、関西のある街の明るいカフェでした。ひかりさんは話すことにとても集中しており、運ばれてきたにぎやかなスイーツさえ、あまり気に留めない様子でした。
「普通」がうらやましかった
小さい頃ひかりさんは、家が教会であること、親が牧師であることが嫌でたまらず、「普通の家庭の子がうらやましい」と感じていたそう。
例えば、周囲は親がサラリーマンで土日やお盆が休み、という子が多かったのですが、教会では毎週日曜に礼拝があり、土曜日はその準備にあてられていました。週末に家族で出かけることはかなわず、夏休みに祖父母の家に行くのも土日を避けるため、いとこに会えることもありませんでした。
休み明け、友達が「どこに出かけた」とか「いとこと遊んだ」などと話しているのを聞くと、うらやましく感じたそう。今となれば、土日やお盆が休みではないおうちも世の中にはたくさんあるとわかるのですが、当時、周囲にはたまたまいなかったのです。
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