米国バイオエタノールの失敗--熱狂しても忘れるな!官製市場の落とし穴
ブッシュ前大統領は、06年の一般教書演説でバイオエタノールの重要性を強調。翌07年には17年までに再生可能燃料を年間350億ガロン使用するという目標をブチ上げた。350億ガロンをトウモロコシで賄えば、米国の年間トウモロコシ生産量にほぼ匹敵する約120億ブッシェルが燃料になってしまう。
トウモロコシは世界の生産量の約4割、輸出量では約6割を米国が占める、米国依存度が極めて強い穀物だ。その米国のトウモロコシがすべて燃料用に回れば、世界中で食糧危機が起きかねない。そうした懸念が持たれる一方、投資資金はバイオエタノール業界に殺到した。
さすがにトウモロコシ全量をエタノール向けというのは現実的ではなく、07年末成立の「2007年エネルギー法」では、再生可能燃料を22年までに360億ガロンまで拡大するとしたが、トウモロコシエタノールは15年までに150億ガロンまでにとどめ、残りは非食用作物由来のエタノールで賄うとした。もっとも150億ガロンといっても07年当時の2倍以上の水準。米国のトウモロコシ生産量が増え続けなければ、輸出分がなくなる心配は残る。
結局、エタノール需要の増大は、トウモロコシと連動した穀物全般の価格高騰を招いた。むろん、穀物価格の上昇は新興国の需要増大、原油高、投機資金流入など、複雑な要因が絡み合っている。必ずしもバイオエタノールだけが犯人ではない。それでも「バイオエタノールの生産が、07/08穀物年度でトウモロコシ価格を約22%押し上げた」と、農林水産省農林水産政策研究所の小泉達治主任研究官は分析する。