米国バイオエタノールの失敗--熱狂しても忘れるな!官製市場の落とし穴

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誤った政策は市場を壊す

量産効果で将来のコスト低下が確実な太陽電池と違って、バイオエタノールは農地の制約から量産効果も限られる。いつまで経っても政府の補助はやめられない。さらに産業規模が拡大すれば、食糧と原料や農地、水の奪い合いを起こす。

それでも、バイオエタノール振興策が採られたのは、枯渇する原油に対して再生可能性や温暖化ガス排出量削減といった大義名分があったからだ。しかしこれとて、生産時に投入するエネルギーと得られるエネルギーの収支を比べた場合、トウモロコシエタノールが本当に割に合うのか研究者の間でも意見は分かれている。トウモロコシの栽培条件やエタノール生産工程の違いに左右され、場合によって温暖化ガス削減効果はゼロというケースもある。

「エネルギー自給率の向上や環境は建前で、農業政策が本音」(東京大学農学国際専攻・鈴木宣弘教授)という批判は根強い。米国農務省の調査では、穀物高を反映して農家の収益は08年に史上最高を記録した。09年は08年より約20%落ちるが、それでも過去10年の平均を9%上回る高い水準となる見通しだ。

エタノール振興策は、ブッシュ前大統領による石油業界への利益誘導と見る向きもある。電気自動車と違い、ガソリンに混ぜるバイオエタノールは石油業界の秩序を乱さない。連邦政府のバイオエタノールへの税額控除はエタノール業界ではなく、ガソリンとエタノールを混ぜる事業者(ブレンダー)に与えられている。

本音がどこにあったにせよ、米国のバイオエタノール政策を待ち受けるのはイバラの道だ。政府が新たなテコ入れ策を採れば、将来の食糧危機のリスクを高めてしまう。といって何もしないで、エタノール産業を見捨ててしまえば、トウモロコシ価格は暴落必至だからだ。

たとえ大義があっても経済合理性を無視した政策の後遺症は重い。政府主導のグリーンブームでは、そのことに留意しておく必要がある。

(週刊東洋経済)
写真:日本雑誌協会(JMPA)

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