【産業天気図・医薬品】薬価引き下げで「雨」。新薬なき新薬メーカーにとっては土砂降りが続く

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医薬品業界の2008年前半は国内の薬価引き下げで「雨」。そして、その雨足は今後ますます強まりそうだ。
 財政健全化を図りたい国はかねてから薬価引き下げ姿勢を鮮明にしており、今年4月からの薬価引き下げ幅は業界平均で5・2%となった。市場拡大再算定(数量が大きく伸びた領域はねらい打ち的に引き下げされる)の対象となった高血圧薬ARB(アンジオテンシン〓受容体拮抗阻害剤)や抗うつ薬SSRI(選択的セロトニン受容体拮抗剤)に関してはさらに引き下げのマイナスインパクトは大きい。今回の引き下げ幅5.2%は、前回2006年4月の6.7%よりは小幅にとどまりはしているものの、新薬メーカーの国内利益を確実に圧迫することは変わらない。
 一方、ジェネリック(後発)医薬品の使用促進策がさまざまに打ち出された。一つは処方箋様式の変更。後発医薬品への変更が「不可」な場合のみ、医師が署名する形になった。さらに、保険薬局や保険薬剤師のルールである「療養担当規則」も後発医薬品の使用を促進させる内容に改正された。薬局に関しては、後発医薬品の調剤率が30%以上の薬局に経済的インセンティブを用意してもいる。この点、沢井製薬<4555>や東和薬品<4553>といったジェネリック専業メーカーに加え、明治製菓<2202>、キョーリン<4569>、日本ケミファ<4539>など後発医薬品も手がける新薬メーカーにとっては追い風となる。いずれにせよ、後発医薬品の“ブレイク”は「起きるか起きないか」ではなく「いつ起きるか」という問題である。既存製品に画期的新薬がなく、パイプライン(新薬候補リスト)の後期臨床試験スケジュールにも画期的候補品がない、まさに名ばかりの新薬メーカーは撤退を迫られること必至であり、業界再編は待ったなしの状況だ。キリンホールディングスによる協和発酵工業<4151>の買収、富士フイルムホールディングスによる富山化学工業<4518>の買収に続く、業界をまたいだM&Aも十分あり得る。
 国内2強である武田薬品工業<4502>とアステラス製薬<4503>は海外売上高比率が高く、薬価引き下げやジェネリックの影響は薄い。ただ、次世代大型新薬の開発スケジュールの遅延と特許切れという別のリスクが遠くで雷鳴をならす。アステラスに関しては今年、主力製品の免疫抑制剤プログラフが最大市場の米国で特許切れを迎える。彼らの危機意識を表すかのように、昨年からエーザイ<4523>の米MGIファーマ買収、武田薬品のアムジェン日本法人買収などのバイオ分野での大型M&Aが目立ち始めた。
 一方、抗血栓薬プラスグレルを米国申請した第一三共<4568>は久々に気を吐いた格好。米国当局による優先審査品目に指定され、うまくいけば今期中に久々の大型新薬が世界デビューすることになる。
【高橋 由里記者】

(株)東洋経済新報社 四季報オンライン編集部

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