藤森照信、素材の旅 藤森照信著
聚楽土(じゅらく)、茅、クリ、柿渋、貝灰、鉄平石。これらに共通する要素は何か。
答え--すべて、伝統的な日本建築の素材である。聚楽土と貝灰は壁材、茅と鉄平石は屋根材、クリは構造材、柿渋は塗料となる。
本書は、日本建築の伝統素材20種類の生産現場を建築史家の著者が探訪した。
日本の伝統的な素材は、われわれにとって非常に疎遠なものとなり、現物に触れる機会がほとんどない。
たとえば檜皮(ひわだ)。字のとおりヒノキの樹皮で、寺社の屋根材料として使われる。日本だけで使われてきた素材で、ヒノキの木から正しくさえ剥げば、10年経つと樹皮は再生して、再び採取できるようになる。
しかし生産量が少なく、葺きの作業もひどく手間がかかるため、檜皮葺きは非常に値段が高い。何と坪当たり50万円もかかるという……などと、本書には興味深い話がたくさん収められている。写真もいい。
日本文化に関心の深い人にお薦めだ。
新建築社 2520円
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