PCデポ、「サービス特化」でつかんだ最高益 「商品は他社で買っていただいて結構です」

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店内を見渡すと、商品がぎっしりと詰まった棚は一つもない。壁側に一部、カメラやプリンターのインクが置いてある程度だ。展示するPCも数台で、多くの商品を並べる家電量販店の常識では考えられない売り場だ。

相談コーナ-では、あらゆるPCやモバイル機器の問題に対処してもらえる

商品棚の代わりに置かれているのは「相談コーナー」。この店のターゲットは、PCやスマホなどを使いこなせないシニア層だ。

相談コーナーでは、「初期設定をして欲しい」「PCとスマホが接続できない」などといった、パソコン関連機器のあらゆる疑問に対応している。

こうした客にサポートサービスを提供したり、会員制のプレミアムサービスに加入してもらうことが、店舗の主な業務になっている。

業績悪化を機に大胆転換

PCデポは1994年の設立。Windows95などのブームを追い風に、順調に規模を拡大してきた。

だが、PC販売の勢いは徐々に鈍化していく。近年は新規需要から買い換えが中心の市場になり、「最新機種が出たからではなく、冷蔵庫や洗濯機のように壊れたら買い換えるようになってきた」(広報担当者)。また、タブレットやスマホの普及により、PCが壊れると、タブレットなどに買い替えるケースも増えていった。

店舗には修理の受付カウンターもあり、PC、モバイル端末などの修理に応じている

加えて、価格競争の激化やタイの洪水による部品高騰の影響を受け、2011年度の営業益は5.5億円と前年度の13.6億円から急降下。翌2012年度も8.7億円と低調だった。

そこで、薄利多売で外部環境の影響も受けやすい物販から距離を置き、サービスを中心に拡大させることで、2013年度の営業益は23.1億円へと一気に復活を遂げた。

また、当初はPCがサポートの中心だったが、対象をスマホなどの関連機器にも拡大。修理や各種設定のサポート機会を増やしてきたのだった。

ヤマダ電機やビックカメラといった大手の規模には及ばない。だが、他の量販店の営業利益率が3~4%台にとどまる中、PCデポは7%と頭一つ出ている。今後もサービスを軸とした店舗の新規出店や改装を進め、独自路線で成長を目指す方針だ。

富田 頌子 東洋経済 記者

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とみた しょうこ / Shoko Tomita

銀行を経て2014年東洋経済新報社入社。電機・家電量販店業界の担当記者や『週刊東洋経済』編集部を経験した後、「東洋経済オンライン」編集部へ。

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