歴史和解と泰緬(たいめん)鉄道 ジャック・チョーカー著

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歴史和解と泰緬(たいめん)鉄道 ジャック・チョーカー著

シンガポール陥落で捕虜となったイギリス将兵はビルマとタイを結ぶ泰緬(たいめん)鉄道建設に3万人が動員され5人に1人が命を落とした。手足を失った者、また多数。本書はその凄烈(せいれつ)な収容所生活3年半を文と100枚余のスケッチで臨場感たっぷりに描き出す。美術学校出身の著者は収容所、仲間、医療行為、日本兵、草花や風景など淡彩画を監視兵の目を盗んで描き続け、隠しきった。驚くほど詳細で時に悲惨極まりない絵はどれも意外に清冽である。

訳文はこなれており異色の戦争記録文学となった。劣悪な生活環境と食、監視兵、傷病の悲惨など捕虜収容所の一部始終が画家独特の観察眼で語られる。特に死と隣り合わせつつもユーモアを楽しむイギリス兵たちの描写は白眉である。なお、これだけの苦難を味わってなお日英和解へ進む著者は今90歳、日本語版序文を寄せている。小菅信子氏の解説、アジア内部の視点からの鼎談、そして本文、どれも深く、重い。 (純)

朝日新聞出版 1575円

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