投資家の根(CON)比べが試される年になる テクニカル面からみて日本株は売られすぎ

拡大
縮小

2つ目はOilのO。2015年のWTI原油先物は年30%も下落した。産油国は政府支出や海外投資の圧縮に懸命となっている。2016年に入ってサウジアラビアがイランと外交を断絶すると表明し、地政学リスクの高まりから原油価格は一時的に戻している。ただ、米シェールオイル・ガスの増産が続くうえ、イランが米欧の経済制裁解除で輸出再開すれば、原油市場の供給過剰は必至。中長期的な需給面からの底入れはみえにくい。今後もオイルマネーの縮小から世界の金融市場が不安定になる場面が想定される。

3つ目はNY市場のN。2015年のNYダウは年2%の下落で引け、戦後から続いていた米大統領選前年の株高神話が途切れた。2016年の最大の焦点は米大統領選。現状の政治や経済体制に米国民の不満が顕著となるなか、11月の投開票の行方は気掛かり。また、9年半ぶりの利上げに踏み切ったFRBは、今後のかじ取りが問われる。仮に米利上げのピッチを見誤ればハイイールド債市場等が揺らぎ、シェール開発企業の資金繰り悪化につながりかねない。中国経済の減速懸念、産油国の財政不安、米国の利上げピッチ等を計らいつつ、投資家の「根(CON)比べ」が試されそうだ。

年後半は積極的な売買が手控えられそう

ただ、日本株はテクニカル指標をみると売られすぎを示唆している。長期投資家の損益分岐点ともいえる200日線をマイナス6%近く下回り、株式市場の体温計ともいえる騰落レシオが底値圏の70%台まで低下している。昨秋以降の上げ幅(1万6930円→2万0012円)に対する半値押しや61.8%押し水準(1万8107~1万8471円)で下げ渋りつつあり、ここからの下値は限定的との見方もできよう。

2016年の日本株は平成初の5年連続高がかかる。まずNISA120万円拡充(1月)、中国春節(2月)、北海道新幹線開業(3月)、ジュニアNISA開始(4月)、伊勢志摩サミット(5月)が控える。年前半は個人マネーによる買い支えやインバウンド消費が下支えしそうだ。一方、参院選(7月)、リオ五輪(8月)、米大統領選(11月) が予定されている。年後半は日米政局を見極めるため、積極的な売買は手控えられそう。2016年の日経平均株価は年央高、予想レンジは1万8000円~2万1500円とみる。

中村 克彦 みずほ証券 シニアテクニカルアナリスト

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なかむら かつひこ / Katsuhiko Nakamura

IFTA国際検定テクニカルアナリスト(MFTA)、日本テクニカルアナリスト協会(NTAA)評議員。

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