御厨:で、「どうするの?」になるんですが、政治は取りあげない。ただ安倍政権が上手なのは、これまでの政治が避けてきたひとつは、国民に「水はしょっぱいけど飲んでください」と言うこと。それと集団的自衛権という国家安全保障の問題をやりました。どちらも自民党政権はタブーにしていた。そして、増税を取った。でも軽減税率とかでもめているでしょ。安倍さんは増税や軽減税率の問題に対して、あまりやる気がないですよ。
木本:えー! そうなんですか?
御厨:うん、あれだけもめて軽減税率を入れて、公明党と妥協したわけでしょ。ああいう嫌な政策は安倍さんは自分から主導をしない。党の中で、ずっともめにもめて、最終的に菅義偉官房長官が引き取るという形で決めたわけです。
安倍さんは、ええカッコのところしか行かない。だから海外に行くのが好きでしょ。海外に行っては、やたらと経済協力を約束してくる。もちろん長期政権だから国のプレゼンスはあがりますよ。でも、あれは僕らの税金を使って行っているんだよ。あたかも自分のおカネのように使っているけれど。
官房長官とは影の人
木本:外でええカッコしいな旦那みたいなもんですね。で、家に帰ってくると官房長官に怒られるわけですか。
御厨:「なんとかしといて」と言われて菅さんが動く。
木本:菅さんは暗躍して、かなりのことをしているわけですね。でも官房長官のアピールって、なかなか僕ら国民に伝わりにくいところある。
御厨:伝わりにくい。もともと影の人だからね。でも菅さんは、相手の感情を掴むのが格別にうまい人です。能力があるのだと思います。
木本:菅さんは、幹事長代行のときでも線が細いなと思ったのですけど、だんだんいつの間にか画面で見ると説得力が増していますよね。
御厨:だんだん余裕とオーラが出るのです。だいたい会見でも記者が遠慮して、官房長官に「こういう質問したら嫌がるだろうなあ」というのは、就任当初はやるのだけれど、そのうち遠慮してやらなくなる。
木本:そうなんですか、面白いですね。
御厨:それは、菅さんが怖いからではない。聞く記者のほうで共同体意識ができて、あまり質問の幅を拡げないようになってくる。ある意味での茶番なのですが。
木本:大人の最高級の茶番をするようになるわけですね。そんな様子を見ているうちに「立派な人なのだな」と思えてくる。なるほど。政治のパフォーマンスの裏側が理解できました。
(構成:高杉公秀、撮影:梅谷秀司)
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