木本:ちょっと戻るんですけど、たとえば自民党になる時に、自由党と民主党がくっついたときの衝撃度はどれくらいだったんでしょうか。今でいえば、自民党と現在の民主党がひとつになってしまうくらいの衝撃ですか?
御厨:もっと大きいでしょう。中選挙区制のもとでは政友会と民政党が同じ選挙区で相手を蹴落とすという選挙をやっていた。それは戦後になっても残っていた。だけど一緒になってしまうと、民主党の議員が自由党の議員をけなせなくなる。だから違う党の方がやりやすいわけです。
だけど、それを覆い隠すのが高度成長です。もう論点がなくなった。安全保障上の論点は、岸の時に決着がついている。経済成長でも、とにかくパイは増えている。そこで、どんどん増えていって、それを全員に切り分けて分配してくれる。これくらい日本にとってハッピーな時代はなかった、まさに黄金時代でした。
木本:黄金時代がやってきて、現在はその名残なんですね。ということは、これからどんどん変わって、50年後はまったく違う政治になっているかもしれない。
消費税を持ち出すたびに政権はつぶれた
御厨:可能性としてありますよ。よく言うように、1990年代から経済が右肩下がりになりました。パイが増えないのは自民にとってはショック。パイが増えるから自民党の中でも喧嘩しなかった。ところがパイが増えない、増えないどころがだんだん減らしていって「おたくの所にはもうパイの配分はないですよ」と言わなければならなくなってきている。
それをずっとごまかしてきた。言いたくなかったから。政治家というのは基本的に選挙民にウケることを言いたい。中にはその後、財政再建という総理大臣も出るんですが、必ず選挙に負ける。
ましてや消費税導入なんて言うのは、大平正芳さんも負けたし、その後かろうじて竹下登政権が、リクルート事件なんかもあって、自分の退陣と引き換えになんとか通した。その後だって、消費税のパーセンテージを引き上げるだけで大変。みんな嫌がるのですから。
木本:ダイレクトに財布から出ていくおカネですからね。
御厨:当たり前ですよね。値札みたら「えっ、こんなに高いの!」ということですから。だから国民みんなが嫌がるのです。でも、そうしているうちに国の財政赤字がすごいことになった。
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