P&G、日本未上陸のブランド投入で反撃 日本トップのベセラ新社長が明かす秘策

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神戸・六甲アイランドの日本本社は自社ビルだったが、2014年に中国系商社に売却。2016年から神戸・三宮のビルにテナントとして移転する(撮影:ヒラオカスタジオ)

――P&G全体では、43あった美容ブランドを2015年7月に125億ドル(約1.5兆円)で売却するなど、大胆な事業整理を進めている。

美容ブランドの売却によって、消費者に便益を感じてもらえて、かつ、勝てるブランド構成に統合・整理できたと思っている。今後は、高級化粧品のSK-Ⅱやヘアケアの「パンテーン」など、当社の業績に貢献するような重要なブランドに経営資源を投入させ、引き続き育てていきたい。日本において、SK-Ⅱは順調に実績を伸ばしており、パンテーンもビジネスとして成功している。

特にSK-Ⅱは、私が2003年からシンガポールで美容部門のマネージャーをしていたときに担当していた、ブランドの一つ。日本の社長として、SK-Ⅱが消費者から支持されているのを再び見ることができるのは、喜ばしい。同ブランドの愛用者は本当に何年も使い続けてくれている。だから、見た目から年齢が分かりにくい日本人の中でも、SK-Ⅱの愛用者は更に年齢不詳だ(笑)。

――奥山前社長は前2015年6月期に売上高を3%伸ばした。これをどう評価しているか。

成熟した日本市場において、決して満足できない数字ではない。ただ、私はさらに、成長を加速させていきたい。

単価を上げ、ニッチ商品も伸ばす

――今後の成長戦略とは。

戦略の柱は三つ。一つ目は、数量的な伸びが期待できないカテゴリの単価を伸ばしていくこと。値段は高いが、やっぱりこちらの方がいい、と思われるものを投入する。最近のいい例が、2014年に「ボールド」と「アリエール」から投入した、ジェルボール型の衣料用洗剤だ。粉でも洗剤でもない第三のカテゴリとして、停滞した衣料用洗剤市場を成長させることができた。

二つ目が、全員が使っているわけではない、ニッチ商品の世帯浸透率を上げていくこと。たとえば、布用消臭剤の「ファブリーズ」や、柔軟剤と組み合わせて衣服の香りづけをする「レノア アロマジュエル」。どちらも生活必需品ではないが、消費者への紹介の仕方を工夫していくことで、成功した。ファブリーズがそうであるように、日本でターゲットの仕方を生み出し、それを世界に広げていくような商品を作りたい。

そして三つ目が、日本未上陸のブランドを投入することだ。P&G全体では65程度のブランドを持っているが、日本で発売されているのは、わずか20ブランド程度。未導入のものが40以上ある。ただ、この戦略はまだ具体的な話ができる段階ではない。長期的に考えていきたい。

「VISION2020」と呼ぶ、具体的な今後の戦略については近々、メディアに話す機会があるだろう。

印南 志帆 東洋経済 記者

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いんなみ しほ / Shiho Innami

早稲田大学大学院卒業後、東洋経済新報社に入社。流通・小売業界の担当記者、東洋経済オンライン編集部、電機、ゲーム業界担当記者などを経て、現在は『週刊東洋経済』や東洋経済オンラインの編集を担当。過去に手がけた特集に「会社とジェンダー」「ソニー 掛け算の経営」「EV産業革命」などがある。保育・介護業界の担当記者。大学時代に日本古代史を研究していたことから歴史は大好物。1児の親。

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