「繰延税金資産」のルール変更、企業に甘く? 安易に回収可能性が高くなる恐れも

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 これらについて、繰延税金資産の回収可能性は、以下のように定められている。

分類1:全額回収可能。現行1号と同じ。

分類2:スケジューリング不能な将来減算一時差異以外の全額――すなわち、いつ税メリットを取り込めるか分からない繰延税金以外、ほぼ全額を回収可能とみるのは、現行の2号と同じ。ただし、現行2号と違い、企業が合理的な根拠を持って監査法人に説明できた場合、スケジューリング不能な部分についても、回収可能性があるとみる。

分類3:おおむね5年以内を限度として回収可能とみるのは、現行の3号と同じ。ただし、5年を超える部分についても、企業が合理的な根拠を持って監査法人に説明できた場合、回収可能性があるとみる。

分類4:1年以内を限度とするのは、現行の4号と同じ。ただし、企業が合理的な根拠を持って監査法人に説明できた場合、分類2や分類3と同じように見なす。一方で、リストラ目的による大赤字かどうかは、判断基準にしない。

分類5:現行の5号と同じで、回収可能性を原則認めない。

これが新たな回収可能性の考え方

 以上の回収可能性を簡略化すると、以下のように言い換えられる。

分類1=現行の1号と同じ。

分類2=現行の2号+企業が合理的な根拠を持って監査法人に説明できた、スケジューリング不能な部分。

分類3=現行の3号+企業が合理的な根拠を持って監査法人に説明できた、5年超の部分。

分類4=現行の4号+企業が合理的な根拠を持って監査法人に説明できた、1年超・5年超の部分。※リストラ目的によるただし書きはなし。

分類5=現行の5号と同じ。

以上を見る限り、繰延税金資産の回収可能性の基準は、緩くなると考えられるだろう。

しかし、小賀坂副委員長は、「緩めているつもりはない。企業が判断する局面は増えるが、監査が緩くなるわけではない。IFRSには分類がなく、すべてを企業の判断に委ねているが、だからといって緩いかというと、そうでもない。緩いか緩くないかは、今後出てくる決算で、判断されるべきものだ」と、そうした見方に反論した。

今後、新たな実務指針を”悪用”する会社が出てくるか、どうか。第2、第3の東芝、新日本監査法人が、現れはしないか。それはひとえに、企業自身の自律、監査法人の姿勢にかかっている。

山田 雄一郎 東洋経済 記者

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やまだ ゆういちろう / Yuichiro Yamada

1994年慶応大学大学院商学研究科(計量経済学分野)修了、同年入社。1996年から記者。自動車部品・トラック、証券、消費者金融・リース、オフィス家具・建材、地銀、電子制御・電線、パチンコ・パチスロ、重電・総合電機、陸運・海運、石油元売り、化学繊維、通信、SI、造船・重工を担当。『月刊金融ビジネス』『会社四季報』『週刊東洋経済』の各編集部を経験。業界担当とは別にインサイダー事件、日本将棋連盟の不祥事、引越社の不当労働行為、医学部受験不正、検察庁、ゴーンショックを取材・執筆。『週刊東洋経済』編集部では「郵政民営化」「徹底解明ライブドア」「徹底解剖村上ファンド」「シェールガス革命」「サプリメント」「鬱」「認知症」「MBO」「ローランド」「減損の謎、IFRSの不可思議」「日本郵政株上場」「東芝危機」「村上、再び。」「村上強制調査」「ニケシュ電撃辞任」「保険に騙されるな」「保険の罠」の特集を企画・執筆。『トリックスター 村上ファンド4444億円の闇』は同期である山田雄大記者との共著。

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