三菱UFJの苦悩、モルガン・スタンレーへの出資で損失
「ふざけた話ですよ。こちらにとっては」──。三菱UFJフィナンシャル・グループ(以下、MUFG)の2012年第1四半期(4~6月期)の最終利益は1829億円と比較的堅調だった。だが、同社幹部には困惑が広がっている。持ち分変動損失として計上された232億円があまりにも予想外だったからだ。
この損失は、MUFGが持ち分法対象にしたモルガン・スタンレーに起因する。モルガンが幹部社員に対するボーナスの大半を自己株で支払うために、新規に株式発行したためだ。この希薄化によって、MUFGによる持ち分比率が22・4%から21・8%に低下したことで持ち分変動損失が発生した。しかも、これは一過性ではない。今後も社員に対するボーナスの大半が株で支払われ、MUFGにとっては毎期損失に悩まされることが予想される。
リーマンショック以降、欧米の金融機関は国民や政治家から戦犯扱いされてきた。中でも幹部社員への高い報酬が彼らを無謀なリスクテイクに駆り立て、貧富の差を拡大させたとして標的にされている。そのため、FRB(米国連邦準備制度理事会)は大手の金融機関に対し、幹部社員のボーナスの大半を現金ではなく、自己株で支払うように「指導」。目先の利益を追わず、長期的な視野で仕事をするべきだ、というわけだ。