戦後最大の難民危機、問題はどこにあるのか

シリア難民だけが難民ではない

――長期化とは、どれくらいの年数を指すのですか。

今の難民状態の平均年数が17年なんです。けっこう恐ろしい数字です。シリア難民は2011年のアラブの春以降に発生し、それから4年が経ちましたが、つまり、この状態があと13年間続く。これが平均ということは、これより長く難民状態にある人が存在するということを意味します。

欧州に来る難民は一部に過ぎない

小俣直彦(おまた なおひこ)/オックスフォード大学難民研究センター主任研究員。人類学をバックに現地調査を行う。アフリカに出向くことも多く、難民キャンプで一緒に暮らしながら調査する。東京大学法学部卒、タフツ大学フレッチャースクールで修士号、ロンドン大学SOASでPh.D取得(撮影:梅谷秀司)

現在は難民問題を語るうえで、欧州に来るシリア難民のケースにみんなの関心が集まっています。確かに、あれだけの規模の人たちがこれだけ短期間で難民になるというのは、世界的にみても非常にマグニチュードが大きいので、これはこれで重要なことです。

ただ、その一方で、難民状態が長期化して存在が徐々に忘れ去られていくケースも多い。よく6000万人という数字が出ますが、このうち難民として正確に認定されているのはだいたい2000万人弱。これに国境を越えていない国内難民と“stateless people”と呼ばれる国籍のない人々を含めて6000万人です。2000万人のうちの過半数が長期化した難民です。

――長期化した難民に光が当たらない……。

そうです。今回に限らず、どこかで内戦が始まり、難民がドーンと発生した、そういうときに光が当てられ、おカネも比較的集まりますが、時間が経つにつれて、忘れ去られていきます。時間が経過しても難民状態のまま亡命国でキャンプ生活を強いられている人が多い。報道をみていると、そういう人たちにスポットライトが当たることはほとんどないですね。

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