戦後最大の難民危機、問題はどこにあるのか

シリア難民だけが難民ではない

――17年間が平均値ということは、いったん難民になると、本国に帰還することは非常に困難ということでしょうか。

本来そうあるべきではないですが、実際にはそうなりがちです。難民状態を解決する方法は基本的に三つ。一つは、トルコにいるシリア難民がシリアに帰る、本国帰還。国連からすると、これが理想的です。二つ目は難民の一時亡命国での社会統合です。

先の例ですと、シリア難民がトルコに逃げ、トルコの社会に統合される。あまり考えにくいことですが、トルコ政府がシリア難民に選挙権などの市民権を与える状態です。三つ目が第三国定住と呼ばれるもので、まったく別の第三国がシリア難民を受け入れることです。

三つの解決法がほとんど機能していない

現在、この三つともにほとんど機能していません。内戦が長期化すると、本国帰還は進まないし、内戦後だと社会的インフラも破壊されているので、難民も簡単には帰りたがらない。受け入れ国での現地統合についても、受け入れ国の大半は隣国や周辺国で、経済的なキャパシティが限られているケースが多いのが実情です。アフリカの難民だと、欧州まで来るのは実は珍しいケースで、ほとんどはアフリカ大陸にとどまっています。難民を受け入れている国も、体力はありません。第三国定住にいたっては、統計的には1%の難民にしか機会が与えられていません。

東西冷戦終結後は内戦などの紛争を理由にした難民が増えています。難民になる要因が増えていることも事実ですが、解決方法がうまくいっていないことで、難民の状態が長期化せざるを得なくなっています。

――今後も増える一方なのでしょうか。

予測は難しいです。冷静に見れば、どんどん増えるかどうかはわかりませんが、おそらく高止まりの状態のままで、減らないでしょう。私の同僚であるシリア問題の専門家は「シリア情勢は、今後3、4年間は解決されず、長期化するだろう」といっています。

たとえば、アフリカのブルンジでは今年難民が発生しています。日本がかつてPKOとして派遣した南スーダンでも紛争で難民が出ています。この問題はまさしくグローバルアジェンダ(議題)で、欧州だけの問題ではありません。

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