戦後最大の難民危機、問題はどこにあるのか シリア難民だけが難民ではない

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――日本政府は難民受け入れに実に消極的です。

日本では2014年に5000件の難民申請があって、11件しか認定されていない。この事実が各国で報道されて、難民関連のシンクタンクでも「これはどんな説明をしても、異常値じゃないか」と言われました。

日本の難民政策の根源的な問題として、難民認定を法務省の入国管理局がやっていることがあります。彼らの使命は日本に危険人物を入れないことで、彼らに難民審査もやらせるのは、利益相反になりかねません。

入管行政は日本の法律でやればいいのですが、難民認定は国際条約もあり、難民が発生している国のコンテクストを理解しないと、難民認定はなかなかできません。入国管理とは別の特殊な知識が必要です。今年9月の国連サミットにおける安倍総理の発言も場違いでした。

安倍首相の発言に「これは誤訳か」と聞かれた

――記者会見で「シリア難民を受け入れる可能性をどう考えるか」と問われて、「人口問題として申し上げれば、われわれはいわば移民を受け入れるよりも前にやるべきことがあり、それは女性の活躍であり、あるいは高齢者の活躍であり、そして出生率を上げていくにはまだまだ打つべき手があるということでもあります」などと答えたことですね。

私は同僚から「これは誤訳か」と尋ねられました。当時、米国や豪州、カナダなど、欧州ではない国も、難民を受け入れますと表明していた。ブラジルやウルグアイ、アルゼンチンといった国も支援しますと言っていました。そういう中での発言でした。日本の経済規模はドイツより大きい。そういうことなどを考えると、日本がほかの国からかなり違和感を持ってみられるのは致し方ないと思います。

前から気になっているのですが、日本では「××難民」という造語が多く使われます。ネットカフェ難民とか、婚活難民とか、すごく安易に使っています。「××難民」という言葉をつけることで非常に軽蔑的なニュアンスになる。シリア難民の女の子を扱った差別的なイラストがフェイスブックで投稿されてしまう。日本人の心理状態に何か問題があるのかもしれません。

私がいちばん問題だと思っているのは、ディベート(論争、議論)が起きないことです。難民を受け入れるかどうかについて、賛成、反対、双方の意見が当然出てくると思います。私はおおむね賛成の立場をとりますが、反対派がいても驚きませんし、むしろ出るべきだと思います。でも、日本の場合、そもそも議論が存在しません。

2016年には難民関連の国際カンファレンスが多く開かれます。国連をはじめ大規模なカンファレンスが続きます。5月には日本で伊勢志摩サミットが開催されますが、そこでも難民問題について日本の立場を必ず聞かれると思います。単におカネがどうだこうだという話ではなく、根源的な話になってもおかしくない。現在起きている難民問題をどうするのか、非常に高度で、専門性の高い議論が行われるでしょう。そのときに、日本はどういう論理を展開するのでしょうか。そのためにも、ディベートを始めていかなければならない。

山田 徹也 東洋経済 記者

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やまだ てつや / Tetsuya Yamada

島根県出身。毎日新聞社長野支局を経て、東洋経済新報社入社。『金融ビジネス』『週刊東洋経済』各編集部などを経て、2019年1月から東洋経済オンライン編集部に所属。趣味はテニスとスキー、ミステリー、韓国映画、将棋。

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