株主主権を超えて ステークホルダー型企業の理論と実証 広田真一著 ~人的資本重視時代に合うステークホルダー型

日本のように、労働市場において転職市場が未整備だと、戦略的補完性が働き、銀行中心の金融制度が発達すると同時に、ステークホルダー型企業が多くなると論じる。企業金融論を超え、経済制度論の書として学ぶこともできる。

経営学では、企業に貢献するステークホルダーのために有形、無形の価値の創造が企業の目的だと論じ、株主主権型モデルを前提とする経済学の主張と対立してきた。経営学の主張も包含する本書が、新たな論争の口火になることを期待する。

納得させられる点も多いが、いくつか疑問も残る。ステークホルダー型企業が多いことは1990年代以降の日本経済の停滞と関係していないのか。利害関係者は企業の存続を望み、経営者も存続重視の経営でリスクを回避する。経営環境が大きく変わる際の、経済発展の源である創造的破壊のプロセスを阻害してはいないか。また、非正規雇用ばかりが増えているのは、ステークホルダーが既得権者になっているからではないか。ぜひ回答をお伺いしたい。

ひろた・しんいち
早稲田大学商学学術院教授。同志社大学経済学部卒業、同大大学院経済学研究科博士課程修了。摂南大学経営情報学部講師、米イェール大学ビジネススクール客員研究員、早大商学部専任講師、同准教授を経て現職。

東洋経済新報社 4410円 338ページ

  

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