竹中平蔵氏「僕が会いたい5人の偉人」 惚れる!歴史のリーダーの「ここ」に学べ

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「高橋是清」にも会ってみたいですね。高橋是清は関東大震災による不況や、中小銀行の経営悪化に端を発した昭和金融恐慌、世界恐慌など、日本が幾多の経済危機に見舞われた時代の経済運営を担った人物です。7度の大蔵大臣、日本銀行総裁、2度の総理大臣を歴任しています。

登用するなら「高橋是清」「下村治」

私生児として生を受け、14歳で仙台藩から留学を命ぜられたものの、旅費を酒代に費やし、奴隷契約にサインしてしまうなど、およそ、エリートのイメージとかけ離れた人物でした。国際感覚に優れ、人間が生きる経済社会全体について深い理解と見識を持ち、「1+1が2、2+2が4だと思いこんでいる秀才には、生きた財政はわからない」という言葉を残しています。社会はもっと複雑だというのです。見事な台詞です。

明治の人材登用は、今にはないダイナミックなものです。高橋是清は私生児ですし、日銀の建築事務所に採用されたのちに、日銀の総裁に就任します。後藤新平も元は田舎の医者です。大久保利通は31歳まで藩主にも会ったことがなかったのに、その16年後には天皇の側近です。

官僚たちをはねのけて優れた人材を採用する政治力、ないしは優れた人を見抜いてブレーンとする見識が、現在の政治のリーダーたちには不足しているかもしれません。キャリア制度をやめて、民間から優秀な人を積極的に登用すればいいのです。

私がもし今、内閣総理大臣であったら、ぜひとも登用したいと思うのは高橋是清か、エコノミストの「下村治」さんです。理由はひとつ、経済を知り尽くしているからです。

当時の池田勇人首相に対し、下村治さんは、「年7%の成長が可能であり、10年で所得が倍になる」と言い、それが「所得倍増計画」に根拠になっています。

実は私は下村治に憧れ、下村さんのようになりたいと思い、下村さんがいらした開発銀行に入行し、エコノミストになりました。

経済学が大事な学問であることはいうまでもありませんが、重要なのは、経済学を使って、どう世の中に貢献できるか、です。これは福沢諭吉が言った「学問のための学問ではない」という言葉にも繋がっています。学問は、学問のための学問ではなく、社会のための学問でもあるのです。それを最も強烈に印象づけたのが、下村治さんでした。

経済はとても複雑で、連立方程式のようです。下村さんはとても寡黙で、ご自分のなかに複雑な連立方程式があって、そこから答えが出てくるというような方です。点をみて、その先にある空間を描ける方です。

自分のなかに複雑な連立方程式を持ち、そこから答えを出す。点をみて、そこから空間を描く。小泉元総理もそういう方でした。

そうなるために必要なのは、「つねに考える」ことです。ものを見聞きしながら、本を読みながら、覚えるのではなく、あらゆることを想定して「つねに考える」ことが重要なのです。

誰もが、いい人生を生きたいと願います。そのためには社会をよくしていかなければいけないし、人生のあらゆる局面で最良の選択をする必要がある。そのためには、川を上って(歴史をさかのぼり)、海を渡る(海外を知る)ことが大切であり、そうすることで生き方の指針を得ることができると思います。

(撮影:今祥雄)

竹中 平蔵 慶應義塾大学名誉教授

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たけなか へいぞう / Heizo Takenaka

1951年、和歌山県和歌山市生まれ。一橋大学経済学部卒業後、73年日本開発銀行入行。81年に退職後、大蔵省財政金融研究室主任研究官、ハーバード大学客員准教授、慶應義塾大学総合政策学部教授などを経て、2001年より小泉内閣で経済財政政策担当大臣、郵政民営化担当大臣などを歴任。

現在、東洋大学グローバル・イノベーション学研究センター長・教授、慶應義塾大学名誉教授、世界経済フォーラム(ダボス会議)理事などを務める。博士(経済学)。著書に『平成の教訓 改革と愚策の30年』(PHP新書)、『この制御不能な時代を生き抜く経済学』(講談社+α新書)など多数。

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