価値が下がらないマンションの意外な「秘策」 「パークシティ溝の口」の住民が変わったワケ

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そんな交流から、パークの秋祭りでは2014年から「ご近所マンションリーダーズパネルディスカッション」なるイベントも始まった。

これは3物件の管理組合理事長、自治会長などのリーダーが集まり、それぞれの物件を紹介しあい、各物件の抱えている悩みや問題を共有、今後、地域のためにどうすれば良いかを語り合う場。こういう場があれば互いに管理組合運営のノウハウなどが共有できる。管理、修繕はもちろん、防災面でも情報その他の共有は役に立つはずだ。

マンション主体に地域活動が活発に

3物件合同で開かれた秋祭りは大盛況

10月末に開かれた今年の秋祭りに参加したが、敷地内は驚くほどに人で一杯。印象的だったのは広い敷地の中央ではなく、公道に面した部分に露店などが出ており、外からの人を迎える雰囲気が強かったこと。古い街の祭りでは地元の顔役のような人たちが内向きに輪になって飲んでいる風景をよく見かけるが、ここでは主催者は意図して街を向いている。地域と繋がろうという意思ということだろう。また、居住者以外の近隣の親子が参加して運営するぱーくCafeも楽しげで多くの人を惹きつけていた。

当日のパネルディスカッションでパークの管理組合理事長桜井良雄氏は高津区久本の人口動向に触れた。高齢化で人口が減少する地域の中で大規模マンション3物件の人口が占める割合はその比重を増している。久本3丁目で見ると世帯の半分がパーク、タワーパークスの住民で、1~3丁目全体で見ると世帯の4割を3物件住民が占めるのだ。とすれば、それだけの人たちが地域に関わる意思を持ち、動き始めれば地域は十分に変わりうる。

実際、街では高齢化のためできなくなっていた祭りが復活したり、この3物件の子弟が通う小学校の60周年行事が多くの父兄の協力でにぎにぎしく行われたりと活気が生まれている。来年は3物件合同で何かイベントをやりたいという話も出ており、いずれは地域の他のマンションも巻き込んでいきたいともしている。結びつきはますます強くなり、街は変わっていきそうなのだ。

パークシティ溝の口は資産価値の落ちない物件として知られるが、こうした活動で街が元気になれば、その力は自物件だけでなく、他物件、街全体にも及ぶ。周辺はもとより、周囲からの住み替えなどが促進されれば、古いマンションの若返りも促進されるかもしれない。マンション発の地域活動。今後はもっとありうるのではないかと思う。

中川 寛子 東京情報堂代表

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なかがわ ひろこ / Hiroko Nakagawa

住まいと街の解説者。(株)東京情報堂代表取締役。オールアバウト「住みやすい街選び(首都圏)」ガイド。30年以上不動産を中心にした編集業務に携わり、近年は地盤、行政サービスその他街の住み心地をテーマにした取材、原稿が多い。主な著書に『「この街」に住んではいけない!』(マガジンハウス)、『解決!空き家問題』(ちくま新書)など。日本地理学会、日本地形学連合、東京スリバチ学会各会員。

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