価値が下がらないマンションの意外な「秘策」 「パークシティ溝の口」の住民が変わったワケ
だが、そうした大規模マンションの連携、地域との協働でいえば今、一番進んでいるのは川崎市高津区久本3丁目にあるパークシティ溝の口とその周辺マンションだろう。
パークシティ溝の口は1984年に旧三井不動産(現三井不動産レジデンシャル)の現在も続く「パークシティ」シリーズの第1号として敷地面積5万6761m2、全12棟(うち高層棟5棟)、総戸数1103戸で誕生した大規模物件である。
築30年超えでも空室は10日で売れる
駅から徒歩5分という立地に加え、当時としては珍しいスーパーなどを入居させた複合開発、日本初という集中立体駐車場などの先進性が話題を呼び、分譲時には棟によって20倍近い倍率で抽選が行われた。
価格は住戸によるものの、3LDKで3200万円程度だったそうだ。その後、バブル時には一部の部屋が1億円もの価格をつけたこともあったが、ここ2~3年の取引事例では専有面積75㎡程度の3LDKが3400万円から3900万円前後。当時とあまり変わらない価格で取引されており、空室が市場に出ても1週間、10日で売れてしまうという、地域のランドマーク的な物件である。
ところが、同物件は高齢化という問題を抱えている。2011年4月に入居、くじ引きで理事となり、以降ホームページ委員会で編集長を務めるなど管理組合に深く関与してきた山本美賢氏によると「2011年時点で世帯主が60歳以上の世帯が60%以上となっており、圧倒的に多数。一方で子育て世帯は8%程度しかいません。そのため、地域の運動会に参加しようとしても子どもの数が足りないほどでした」。
これにマンションが手を打ち始めたのは、山本氏もくじ引きで選ばれてしまった2011年からである。「それまでの管理組合はなり手がおらず、仕方なく高齢の方が引き受けていた状態。そこでくじ引きで決めようということになったのですが、たまたま、そこで選ばれた人たちが従前とは違う年代だったのです」。
不在投票で選ばれてしまった当時、山本氏は49歳。同時期に理事になった人たちはそれよりも少し上が中心だったそうだが、偶然にもマスコミ系や金融系など情報リテラシーの高い、ある程度人生経験がある「動ける」人たちが選出された。当初は新理事長を決める会議に招集をかけても人が集まらないなど苦労もあったが、活動を始めてみたらこれが面白かった。「一気に知り合いが増え、それ以前の周囲に関わらない生活よりずっと豊かになった」(山本氏)。
それならば、と当時の理事長が音頭を取り、どうせやるなら1年で何も成果を出せずに交替する仕組みを廃し、任期2年で半分ずつ交替という仕組みを作り、修繕など長期の計画が必要なものもやりやすくした。
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