東京電力・再生への条件、1兆円投入で国有化
が、出足からつまずいた。電気料金の値上げは認められたものの、もともとは7月から平均10・27%引き上げる予定だった。ところが、電気料金審査専門委員会などの指摘を受け、値上げ幅は平均8・47%に圧縮。実施時期も9月からとなった。この影響を受けて、東電は13年3月期の業績予想を下方修正。売上高は期初計画より500億円少ない5兆9750億円、営業赤字は3050億円と計画より700億円拡大する見通しだ。
原発再稼働はさらに難しい。事業計画では14年3月期に4基稼働予定だが、目下、首相官邸前で毎週のように大規模な脱原発デモが行われるなど、国民の原発再稼働に対する反感は根強い。泉田裕彦新潟県知事など地元の同意を得るにも時間を要するとみられ、「柏崎原発を動かすのに東電から原発事業を切り離すのではないか」(業界関係者)という話まで浮上するほどだ。
柏崎原発が再稼働できない場合、東電によると、1基につき月額70億円の費用増となり、1基も動かなければ来期は1000億円超の営業赤字となると見られる。「仮に3期連続営業赤字となれば、金融機関の融資スタンスが変わる可能性がある。今期黒字化は必達」(スタンダード&プアーズの柴田宏樹上席アナリスト)だ。もとより、東電は料金値上げと再稼働のセットによる黒字化を前提に金融機関からの支援継続を取り付けている。
黒字化には再稼働のタイミングも重要になってくる。「来年度黒字にするには、第4四半期で動くのでは遅い。第1四半期中には(発電規模の大きい)6号機か7号機、さらに夏までにもう1基は最低限動かさないと黒字化は難しい」(みずほインベスターズ証券の河内宏文シニアアナリスト)。
政府関係者の一人は「黒字化には値上げか再稼働のどちらかができればいい。仮に再稼働ができなければ、電気料金をあと5%程度引き上げれば賄える」と話す、が、今回の値上げにもそうとう苦労しており、これ以上の値上げは難しいだろう。
東電関係者は「今のところ再稼働の目標は変えていない。理解を得られるまで要望に応じて安全対策を続けるしかない」と話す。中部電力は原発事故後、浜岡原発の安全対策に1400億円を投じており、東電でもこの程度の費用増はありうる。