東京電力・再生への条件、1兆円投入で国有化
廃炉費用は国が負担か
その後も大きなターニングポイントが二つある。
一つは来年度の通常国会に法案が提出される予定の発送電分離を含めた電力の全面自由化だ。制度設計次第だが、発電と小売り部門は施行当初、猛烈な競争にさらされることが予想される。ただ、地域独占体制がなくなれば東電の取り組みによっては今以上に事業を拡大できる可能性もある。
もう一つは、廃炉と除染費用をどうするか、だ。事業計画には現時点での見積もりは困難として含まれていないが、「将来の見通し等を踏まえて必要となる場合には(中略)制度面での追加的措置の可否について検討」と付記している。特に廃炉は今後30~40年間続き、破損した燃料棒を取り出すなど多くの技術も確立されておらず巨額負担になるのは必至。「たとえば10兆、15兆円となったとき、東電1社で返すのは事実上無理と判断するしかない。となれば、東電の負担はここまで、と国が決める必要が出てくる」(樫谷氏)。
ただし、「カネを出すからには、東電にも徹底的な意識改革をしてもらう」との声が政府内からは聞こえる。東電はその独善的な企業体質が批判されてきた。政府から損害賠償金を支払うための資金援助を受けているにもかかわらず、最近公開された原発事故後のテレビ会議映像はマスコミ限定となったうえ、音声などが加工されるなど、その閉鎖的な体質はまったく変わっていない。
政府の資金援助というチャンスをもらった東電だが、改革が「表面的」なものにとどまってしまうのであれば、その存在意義が問い直されることになるだろう。
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(倉沢美左 =週刊東洋経済2012年8月25日特大号)
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