人生の分水嶺は「瞬間」の判断と行動に宿る 人生の決定的な瞬間に、どう向き合うべきか

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そう。私たちは日々、瞬間ごとに、交差点を前にした自動車の運転手と同じような判断と行動を求められているのです。

しかも、重要なことは、この「瞬間の判断」に、その後の人生が大きく左右されることがある、ということです。右の道を選ぶか、左の道を選ぶか、あるいはそのまま直進するかといったあなたの選択は「いま、目の前で起きている問題」だけではなく、その後長く続いていくあなたの人生全体を左右する、重要な決断かもしれないのです。

人生は瞬間に支配されている

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私たちが「瞬間の判断と行動」によって得るもの、あるいは失うものというのは、あなたの人生の「流れ」そのものといっても過言ではありません。ある瞬間に右の道を選ぶか、左の道を選ぶか、あるいは直進するか。それによって、あなたの人間的成長は大きく左右される。あなたの人生の運の流れ、力の流れは、文字どおり「瞬間」に支配されているのです。

一見ささいなやりとりにすぎない瞬間にこそ、人生を変える力が宿っている。すべてはいま、この一瞬に決まっているかもしれないのです。

僕が、皆さんにお伝えする心理学をできるかぎりマニュアル的なものから遠ざけようとするのは、このためです。実際問題、「目の前の相手との人間関係」をなんとかしようとするだけなら、マニュアル的な対応を学んでいくことで改善できることも少なくありません。もちろん、対人関係においても「たったひとつのミスで破綻してしまう」こともあります。

しかし一般的には、そこまでの厳しさが求められる対人関係というのは例外的です。私たちは互いに未熟であり、互いのミスを許しあうことによって、対人関係の絆をつむいでいるのですから。

しかしながら、あなたの人生全体に目を向けるのであれば、ある「瞬間」にあなたがどう行動するかということは、極めて大きな意味を持っていることが少なくありません。「覆水盆に返らず」という言葉がありますが、ある瞬間を逃すと取り返しのつかないことというのが、人生にはある。誤解を恐れずにいえば、私たちが過ごす日常の「瞬間」には、人生がなぜかうまくいく人と、なぜかうまくいかない人を分ける分水嶺があるのです。

もしそうだとすれば。私たちはどのように、そうした「人生の決定的な瞬間」に向き合っていけばいいのでしょうか? 僕が、僕の心理学の中で追求していきたいのは、まさにそのことなのです。

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名越 康文 精神科医

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なこし やすふみ / Yasufumi Nakoshi

1960年、奈良県生まれ。精神科医。専門は思春期精神医学、精神療法。近畿大学医学部卒業後、大阪府立中宮病院(現:大阪府立精神医療センター)にて、精神科救急病棟の設立、責任者を経て、99年に同病院を退職。引き続き臨床に携わる一方で、テレビ・ラジオでコメンテーター、映画評論、漫画分析など様々な分野で活躍中。
著書に『心がフッと軽くなる「瞬間の心理学」』(角川SSコミュニケーションズ、2010)、『毎日トクしている人の秘密』(PHP、2012)、『自分を支える心の技法 対人関係を変える9つのレッスン』(医学書院、2012)、『驚く力 さえない毎日から抜け出す64のヒント』(夜間飛行、2013)などがある。
夜間飛行よりメールマガジン「生きるための対話」刊行中。オフィシャルウェブサイトはこちら。twitterはこちら

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